真鍋呉夫(1920-2012)、長らくご逗留中。 心に残る文士であられた。 駆出し編集者だったおり、真鍋呉夫さんの原稿を、いたゞきそこねたことがある。 句集『雪女』で藤村記念歴程賞と読売文学賞とを受賞されて、お見事な大復活をとげられるよりも前のことだ。駆出しにとっては、自分の読書範囲の外にいらっしゃる怖いような作家で、いわば幻の作家のおひとりだった。 仲立ちあってお預りした原稿は、それまでの作品集に収録されなかった初期短篇集で、いずれもまだ九州にお住いだった時代、奥さまと新婚ご夫婦であられた時代に材を採った、瑞々しい小説だった。 それまでは、中島敦の後裔かと思わせるような、古典に材を採った、調…