作家。1948年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業 。経済関係の出版社に18年勤務したのち、フリーライターとなる。2011年『白樫の樹の 下で』で松本清張賞を受賞しデビュー。
青山文平氏の父がしたことを読んだ。タイトルが「父がしたこと」なので、物語の重要なポイントで父が何かをしたのだろうというのは想像がついたのだが、それが過去に行ったことなのか、それとも物語が進行する中で起きることなのか、全くわからない状況で最後の方まで来た。最後の方まで来ているので、どう考えても今まで読んできたところに父がしたことが書かれている筈なのだが、全くわからなかった。そして、物語の最後に突入していった。「再来年の天保15年」と書かれているので、1842年頃の時代設定と思われる。物語は父である永井元重と息子の重彰が屋敷の書斎で語らっている所から始まる。父は藩主の側近くに近習する小納戸頭取、息…
江戸時代末期、天保は激動の時代だ。永井重彰は、父・元重から信じがたい話を聞く。藩主が抱える病の治療、その手術が華岡流によって施されるという計画である。 華岡流の外科医・向坂清庵は、ただの医師ではなかった。かつて重彰の息子が重病に倒れたとき、彼の手によって小さな命が救われた。そんな向坂が藩主の手術を引き受けることになれば、もしその手術が失敗した場合には向坂自身もまた、命の危険にさらされることになる。父・元重はこのような事態を予見し、何らかの手を打つ必要があると語る。 「高潔」そのものである元重。彼が下す重大な決断、それによって引き起こされる深い内省や葛藤を、息子・重彰はどのように受け止めるのか。…
江戸染まぬ (文春文庫 あ 64-6) 作者:青山 文平 文藝春秋 Amazon 「江戸染まぬ」 青山文平(著) 文藝春秋 あらすじ 経験を蓄え、無駄を省く まとめ こんな人にオススメ こんにちは、ちわぷ〜です! 週明けにでも「ゴジラ」最新作を映画館に見に行こうかなぁ〜と思ってます! 特段、特撮好きという事ではないし、神木くんと浜辺美波さんという、朝ドラ「らんまん」コンビが今回も組むという事で、 「らんまん」を年明け一気見しようと思っているので、ゴジっちゃったら何かそっちの印象が強くなっちゃいそうで、 今回は一旦待とうかなぁ〜と思ったのですが、一応公式サイトを見てみたら、時代設定が戦後直後との…
先日、青山文平さんの『つまをめとらば』という小説を読んだ。 妻たちからは一様に優柔不断と責められた。振り返ってみれば、幾も紀江もけっして折れない質だった。言い分は決まって、私はまちがっていない、というもので、彼女たちから見てまちがっている者には容赦がなかった。 仏教によると、私たちには「分別心(ふんべつしん)」というものがあり、それによって私たちは物事を二つに分ける。価値のあるものと価値のないものだ。 そして価値のないものとみなしたものを見下して自分は価値のあるところに立とうとしてしまう。そうすることにより自分は価値のある人間であると自惚れることができる。 ニュースで不祥事を起こした人間を叩く…
時は文政5(1822)年。本屋の“私”は月に1回、城下の店から在へ行商に出て、20余りの村の寺や手習所、名主の家を回る。 江戸期のあらゆる変化は村に根ざしており、変化の担い手は名主を筆頭とした在の人びとである、と考える著者。その変化の担い手たちの生活、人生を、本を行商する本屋を語り部にすることで生き生きと伝える時代小説。 青山文平『本売る日々』 主人公は、江戸時代の地方の本屋。時代も環境も現代から遠いのに、そこで生きてる彼ら彼女らの生活が目に見えるよう。そういう気持ちを抱かせてくれる読書という経験って改めてすごいよなーと思う。 作中にずっと、本を読む人、本を好きな人への敬意や信頼の気持ちがあっ…
青山文平氏の本売る日々を読んだ。本書は短編集で、「本を売る日々」、「鬼に食われた女ひと」、「初めての開板」の3編が収録されている。主人公は松月平助という本屋の男である。本と言っても、彼が扱っているのは「物之本」で、仏書、漢籍、歌学書、儒学書、国学書、医書の類である。とある城下町で松月堂という本屋を開いているが、行商のため近郷の村を回ったりもしている。平助が遭遇した物語なのだが、面白かったのは「初めての開板」だった。「鬼に食われた女ひと」は八百比丘尼を想起させる不思議な話で、怪異譚のような感じだ。「本を売る日々」はこの中では一番よくわからない話だった。この短編の中で、中古の版木を手に入れるために…
青山文平の『つまをめとらば』を読んだ。2015年に文藝春秋より刊行され、第154回(2016年)直木賞を受賞した短編の時代小説集で、「ひともうらやむ」、「つゆかせぎ」、「乳付(ちつけ)」、「ひと夏」、「逢対(あいたい)」、「つまをめとらば」の6篇が収録されている。以下はAmazonより: 女が映し出す男の無様、そして、真価―。太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか―。時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。男の心に巣食う弱さを包み込む、滋味あふれる物語、六篇を収録。選考会時に圧倒的支持で直木賞受賞。 直木賞を受賞するだけあって面白かったのだ…
青山文平氏のやっと訪れた春を読んだ。この小説背景はちょっと込み入っている。舞台になっているのは架空の藩である倉橋藩だ。近習目付を拝命してから約40年がたち、長沢圭史はとあることで職を辞すことを決意し、致仕した。そして、同役で同時に近習目付を拝命した団藤匠も職を辞す決意をした。倉橋藩は藩主の直系の家系である岩杉本家と、初代藩主の弟の家系の田島岩杉家が交互に藩主を出すという事を第四代から100年以上も続けている。そのために、近習目付も現藩主と次期藩主とのために二人いた。しかし、次期藩主を出すことになっている田島岩杉家の跡取りが死に、跡取りを出す田島岩杉家には男子は七十八歳の重政しかいなくなった。そ…
★ 末國善己さんが、末國善己編『夫婦商売』(時代小説アンソロジー、角川文庫)の「解説」をお書きになりました。 ・『夫婦商売』、角川書店、2022年3月25日発行、本体640円+税 夫婦商売 時代小説アンソロジー (角川文庫) 作者:青山 文平,宇江佐 真理,澤田 瞳子,諸田 玲子,山本 一力,山本 兼一 KADOKAWA Amazon ・角川書店のHPも、ご覧ください。 www.kadokawa.co.jp
青山文平氏の底惚れを読んだ。読み始めてすぐ、「これは読んだことがあるぞ」と強烈な既視感に襲われた。もう一度タイトルを見た。出版日も見直した。最近出版された本だ。しかし、このストーリーは「江戸染まぬ」じゃないか。でも、短編ではない。どうやら、「江戸染まぬ」を出だしにて、その後に書き加えて長編にしたようだ。江戸染まぬのあの刺された男が死なずに生き延びたらどうなるのだろうかという物語だ。ある種成り上がりの物語でもあるのだろう。だが、単純にそうとも言えない。「江戸染まぬ」では芳の思っていたことと男が考えていたことが決定的に違って、悲劇が訪れるが、この物語でも、男がこうだろうと思って、芳のためにやろうと…
Book Review 9-25 医療 #父がしたこと 『#父がしたこと』(青山文平著)を読んでみた。著者は、松本清張賞を受賞しデビュー。大藪春彦賞、直木賞、中央公論文芸賞と柴田錬三郎賞をW受賞。『半席』『本売る日々』など時代小説を執筆。 目付の主人公は、小納戸頭取である父親でから御藩主が痔瘻で苦しんでいることを告げられる。在村医のM(フィクション)に麻沸湯による全身麻酔を使った華岡流外科手術を秘密裡に行う計画を立てる。花岡青洲といえば、乳がん手術がすぐに結びつくが、乳児の鎖肛の手術もしたらしい。主人公の息子が鎖肛であり、手術に至るまでの周囲の者たちの苦悩が紡ぎ出される。現代のようにレントゲン…
本売る日々 青山文平 文藝春秋 図書館本 江戸時代、農村が豊かな時代なのだろう、村々を行商する平助が扱うのは、主に物之本と呼ばれる学術書や専門書だ。名主や在郷の商人や医家が得意先である。書物そのものが好きなのはもちろんだが、書物に知識を求めて思索をめぐらしていく人々が描かれている。古書への蘊蓄がたっぷり盛り込まれて、少し毛色の変わった時代小説だ。武士も町人も登場しないが、農村の豊かな風景と人々の豊かな心情が感じられていい雰囲気の小説だった。 「本を売る日々」「鬼に喰われた女」「初めての開板」の連作短編。行商の平助が出会った書物を愛する人々との交流が、ミステリやホラーを味付けにして書かれている。…
毎週日曜日は、この一週間( 1/29~2/4)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 2/11 号 2 冊パッキパキ北京 綿矢りさ 集英社 1,595 ⑦神と黒蟹県 絲山秋子 文藝春秋 1,980 ⑤ ◆女性自身「今週の本」: 2/13 号 4 冊人間標本 湊かなえ KADOKAWA 1,870 ②望郷 湊かなえ 文春文庫 693父がしたこと 青山文平…
毎週日曜日は、この一週間(1/8~1/14)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日 (今週号は休刊) ◆女性自身 (今週号は休刊) ◆女性セブン(今週号は休刊) ◆週刊現代「日本一の書評」: 1/13・1/20 号 6 冊互換性の王子 雫井脩介 水鈴社 2,090人間標本 湊かなえ KADOKAWA 1,870父がしたこと 青山文平 KADOKAWA 1,980 ②謎の…
毎週日曜日は、この一週間(12/25~1/7)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 1/14・1/21 号 2 冊寄せ場のグルメ 中原一歩 潮出版 1,980 ③青椒肉絲の絲、麻婆豆腐の麻 新井一二三 筑摩書房 1,760 ◆女性自身「今週の本」: 1/16・1/23 号 4 冊パッキパキ北京 綿矢りさ 集英社 1,595グッド・フライト、グッド・ナ…
さあ年末が迫ってきたぞ、たまっていた振り返りを進めるぞ、の一念。必死。といっても10月に読んだ本は少なくて5冊だけ。仕事がたてこんで本を読む時間がとれなくて、だからこそ読書を渇望している時期だった。書名のあとの数字は今年の読了冊数。 キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』(70) 綿矢りさ『意識のリボン』(71) 青山文平『約定』(72) 高田郁『銀二貫』(73) 青山七恵『前の家族』(74) キム・チョヨプ『わたしたちが光の速さで進めないなら』(70) ここではないどこか遠い風景が、なぜか懐かしく親しみのあるものとして思い起こされるようなSF短編集。好きな世界観だった。 綿矢り…
青山文平作品。やっと青山作品の新しいのが図書館にあって嬉しくなって借りてきて直ぐ読んでしまった。松月堂という物之本を扱う。本とは根本の本・本来の本という。 『本を売る日々』 私は紙屋をやっていたのだが本好きが高じて紙屋を弟佐助に譲り本屋になった。 お得意さんの名主惣兵衛が本が好きで本を読むと色を好まず喜び深いと言っていたのだが71歳で後添えを貰ったという。女郎上がりの17歳の女だという。 惣兵衛宅を訪れ嫁にも本を見せてやって欲しいといわれて見せてる間に画集がなくなった。万引きされたのだ。どうすべきかで悩んでいると惣兵衛は高額のお金を包んでよこした。その本は相手先が決まっている本だった。孫のよう…
大慌てで9月の読書の振り返り。この月は10冊読んだ。なんといっても『卒業生には向かない真実』がすごかったーーー!!! あと川上未映子のエッセイ集もよかった。 ホリー・ジャクソン『優等生は探偵には向かない』(60) 永井紗耶子『女人入眼』(61) 穂村弘・春日武彦『ネコは言っている、ここで死ぬ定めではないと』(62) ホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実』(63) 青山文平『泳ぐ者』(64) 川上未映子『深く、しっかり息をして』(65) 角田光代『紙の月』(66) 本谷聖子『受精卵ワールド』(67) 永井紗耶子『大奥づとめ』(68) 青山文平『半席』(69) ホリー・ジャクソン『優等生は探…
今回のネタは『泳ぐ者』(青山文平 新潮社) 新刊ではない。単行本は2021年3月刊。この秋文庫化された。前blogで前作にあたる『半席』を取り上げたのが2019年2月。その2か月後に監査業務に主軸を置くようになった。今思えば不思議なタイミングだと思う。 時代小説(時期は幕末近く)だがミステリー仕立て、主人公は徒目付(監察、内偵の役目)である。やや監査部門の仕事に似通っている。主人公の徒目付としての成長譚の形をとるが、前作が連作だったのに対して本作は長編である。プロローグ、タイトルの事件、エピローグという構成。ネタばれを避けるが、タイトルの事件の経験を通じてプロローグの事件を省みる流れ。タイトル…
いろいろ言いたいことはある。 あるけれど、本当に反省されていると思うけれど、本当に反省して! 八代拓さんのお名前を、こんなお知らせで見たく、聞きたくなかったよ! もっと良いお知らせで見たかったよ!聞きたかったよ! 以上! それでも私は、声優・八代拓さんが好きなんだよ、こんちくしょう! その演技が好きなんだよ!すまんな! でも二度目はないからな!バカっ! 以上! 本題です。 前回はお送りできませんでしたが。 今回は無事、お送りすることができます。 読書感想文です。 今回、感想をお送りするのは青山文平さんの『泳ぐ者』です。 こちらは若き従目付の片岡直人、そしてその上役である内藤雅之。この2人を主軸…