案の定薄暗い山だな そう彼は独りごとを言っていた。こんな山に登るやつはいないだろう、そう思ったようだが意外に山中では他の登山者に会ったようだ。青梅市のハイキングコースという看板を前に彼は頷いていた。 新年早々彼はなぜあまり楽しそうでない地味な山に来たのだろう。 アマチュア無線という世の中の認知はあまり高くないものを彼は趣味として30年は経つ。正月は多くの無線局が山に登り電波を出す。周波数帯にも依るが基本東京タワーと同じ、高いところからは電波は遠くに飛ぶ。だから山に登る。沢山交信出来る。毎年のはじめに山に登るのは彼のルーティンだった。 登山をする方なら見たことはないだろうか。山頂の一角で釣り竿と…