1890〜1961。評論家、文芸評論家。新潟県佐渡生れ。 早稲田大学英文科卒。読売新聞社記者時代シベリア出兵論に反対、『ある時代の群像』を生む。社会主義理論の研究につとめ、「無産階級」を創刊。以後、社会、政治評論と文芸評論の2面に筆をふるい、その半生は日本の社会主義運動、プロレタリア運動と表裏一体にあり、常に指標的評論を発表しつづけた。 戦後は20年『日本論の文学』の発表を機に批評活動を再開、また日本ペンクラブの再建につとめた。
続けてジョン・リード『世界をゆるがした十日間』を始めとするロシア革命ルポルタージュを取り上げ、また日本人ジャーナリストによるレポートなどもリストアップしておいた。それらはロシア革命とソヴエトに関する出版が一つのトレンドでもあり、確たる分野として大正時代後半から成立され始めていたことを伝えていよう。そうした系譜上に翻訳刊行されたのが、『近代出版史探索Ⅴ』816の第一書房のジイド『ソヴエト旅行記』と『ソヴエト紀行修正』で、それらのベストセラーに近い売れ行きはジイドの時代であったにしても、長いロシア絡みの出版史がバックヤードになっていたと考えられる。 その一方で第一書房はそれらのロシア物の出版社と異…
友人から黒田乙吉『ソ連革命をその目で見た一日本人』を恵送された。これは大正九年に弘道館から『悩める露西亜』として刊行の一冊で、昭和四十七年に世界文庫によって、新たなタイトルで復刻されていたのである。 黒田のことは『近代出版史探索Ⅲ』540で、ロープシンの黒田乙吉訳での『黒馬を見たり』(人文会出版部)の翻訳にふれているが、同じ著者の『蒼ざめたる馬』の青野季吉訳と異なり、ロシア語からの翻訳だと既述しておいた。ただその際には黒田のプロフィルがつかめていなかったし、著書のほうの『悩める露西亜』も知らずにいた。 その後、菊地昌典『ロシア革命と日本人』(筑摩書房)や富田武『日本人記者の観た赤いロシア』(岩…
『青野季吉日記』(河出書房新社、昭和39年7月)昭和20年1月29日の条に、拓殖大学図書館員だった牛島軍平らしき人が出てくる。これは、「拓殖大学図書館員牛島軍平 - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。牛島は、館界には足跡を残しておらず、『図書館人物事典』(日外アソシエーツ、平成29年9月)にも立項されていない。 しかし、折口信夫の研究者には、よく知られた存在だった。青山大五・石内徹・馬渡憲三郎編『迢空・折口信夫事典』(勉誠出版、平成12年2月)に、松本博明氏により立項されている。それによれば、明治29年2月4日大阪生、平成6年7月10日没である。折口の門下生としての経歴・人物像につ…