▼政治思想史の研究者から音楽評論家へと華麗に(?)転身した片山杜秀。その活躍には、きわめて幅広い教養が生かされているようです。もちろんその足元にも及ばない私ですが、学者や評論家の思想的立場にはわりあい敏感なほうですので、あえて書いておきます。 ▼朝日新聞に載っている片山の「音楽時評」には、少々違和感を持ってきました。かつての吉田秀和の文章とは大きく違っています。吉田秀和や他の音楽評論家を意識しながら、わざとセンセーショナルな書き方をしているのかも知れませんが、彼のなかの「ファナティックな何か」が醸し出す匂いを強く感じてきました。 ▼数年前の著書『歴史という教養』(河出新書)で、片山は哲学者・田…