「音楽隊を扱った作品」の第二弾は、警察音楽隊を素材にした内田英治『異動辞令は音楽隊!』(講談社文庫、2022年)。前回紹介した航空自衛隊中央音楽隊と比べると、都道府県ごとに設置されている警察音楽隊の方は、活動領域・隊員数・予算規模はかなり小粒に映ります。また、警察音楽隊に入る前に、特定の楽器でそれなりの水準を獲得してきた人材がきわめて少ないのです。加えて、隊員たちは、それぞれに「通常勤務」を抱えていますので、練習時間を確保することの難しさを痛感しているのです。結果として、演奏技術も自衛隊音楽隊よりは圧倒的に「低い」と評価されています。もちろん、そうした制約がありながらも、音楽と音楽隊を愛する人…