志村ふくみ『一色一生』(講談社文芸文庫 1999年) 志村ふくみについては、以前、宇佐見英治との対談『一茎有情』を読んで面白かったので、少しずつ買いためていましたが、そのうちの一冊。先日読んだ若松英輔の本にも名前が出てきていたので、また読むことにしました。しばらく彼女の本を続けて読んでいきたいと思います。 志村ふくみの魅力は、染織家として糸を染める技芸を極め、そこで培われた色に対する繊細な感受性が、文章に表われていることです。もともと文学への興味がおありになったようで、この本でもノヴァーリス、ゲーテ、マラルメや高村光太郎の言葉が引用されていますし、今読んでいる『母なる色』では、タゴール、プロテ…