2019年12月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 入山から25日目、私たちはようやく第3キャンプに入ることができた。標高7,300㍍の急斜面をスコップで切り開き、3人用のテントに5人が膝を抱えてなんとか収まった。ここで3時間休み、いよいよ私たちはヒマラヤのダウラギリ1峰(8,167㍍)を目指す。 キャンプからの標高差は900㍍だが、高所で酸素が地上の3分の1程度しかないため、おそらく早くて12時間、遅ければ15時間はかかる。下山は3時間ほどで済むかもしれないが、その頃は相当疲れているだろうから、滑落死や疲労凍死の不安があった。 テントにいたのは40代と20代のシェルパ2人…