明日香村の中心部を流れる夏の飛鳥川は、思っていたより小さい。川幅は狭く、浅い瀬の底まで見える。小さな堰を越えた水が白くほどけ、岩の間へ落ちていく。 それでも、水の音を聞いているうちに、この川が小さいのではなく、流れてきた時間のほうがあまりに大きいのだと思えてくる。 飛鳥川は、奈良県中西部を流れる大和川水系の河川である。飛鳥川とも、明日香川とも書く。『万葉集』では、「飛ぶ鳥」ではなく、「明日香川」「明日香河」と記される。 明日が香る川。 その文字を眺めているだけで、悠久の時間と、まだ来ていない一日が、水の流れの向こうから運ばれてくるように思える。 川は、奥飛鳥の栢森(かやのもり)集落で始まる。河…