角川刊行の月刊誌『短歌』に2013年から掲載された連載評論25回分をまとめた著作。80代後半の著述。年季が入っているのに硬直化していない探求心がみずみずしい。 長きにわたり実作者として詩歌や評論を読みつづけてきた技巧と鑑賞眼から新旧の作品を取り上げて論じていて大変参考になるが、語り口が軽く、主張が一回一回完結しないオープンエンド型の論述であるために、読み通したからといってなにごとかを成したというような達成感は味わせてはくれない。そこがまた老年期にあってなお途上にいつづける人の柔軟さであり懐の深さであり、それとともに問題にしていることの奥深さでもあるのだが、悠久のなかで日本語の詩歌における定型と…