宝永3年1月30日。近頃、美濃の偽婦のことで町人が多く預けられる。尾張藩の領分だという濃州ひたち(日立)村に住む円六は百姓のところへ八三郎様局の娘といって女を1人妻に遣わした。実はこの女は馬廻近藤武兵衛の孫で、田辺善太夫の娘であった。飯田町小万物売伊勢屋久四郎という者が首謀者で数々の悪だくみをしており、この者に組する者は侍・町人にも多かった。八三郎様の威を借りて衣服・道具に紋を付け、あるいは偽の内書を作成し、それを遣わして御意だとだましていた。時に座頭野々都、瞽女(欠字)を御前の扶持人に仕立てて慰めにと遣わしていた。座頭・瞽女は本当のことを知らなかったとの言い分が立ち罪に問われなかった。時に円…