第三章 遣外使臣から宰相へ 一 露都に出使す 二 入閣の叡旨を辞退す 三 パリに転任 第三章 遣外使臣から宰相へ 一 露都に出使す ビスマルクはフランクフルトに在任するの間において、宮廷より時々国務上の諮詢に接し、ベルリンとの間を往復すること何十回なるを知らず、その間には入閣の内旨もあった。けれどもウィルヘルム四世王の下にありては到底驥足を伸ばすの見込みなしとみたる彼はこれを固辞して受けなかった。 そのうちに王の精神病はますます昂進し、国務を親裁するあたはざるに至ったので、一八五八年、王弟ウィルヘルム(すなわち後の老帝ウィルヘルム一世)は摂政となった。摂政はビスマルクにみるところあり、翌五九年…