1918年(大7)中村日吉堂刊。作者、青木緑園に関しても生没年や略歴が不詳のままになっている。当時人気があった活動写真(映画)のノベライズ本も数冊出していて、脚本部主任という肩書もあったので脚本家出身とも言えそうだ。特に中村日吉堂のほぼ専属作家として、家庭小説、悲劇小説のジャンルで多い時には毎月一冊作品を出していた。この小説では、酔っ払った客の落とした大金をくすねてその客を自殺に追いやった夫婦が、その金を元手に財を築いたものの、次々に悲劇に見舞われるという話である。芝居の台本のようにとりとめのない会話が多く、登場人物が限られるがゆえに過去のいきさつが妙に関係づけられて完結する。純日本風のお涙頂…