1915年(大4)湯浅春江堂刊。タイトルとしては当時評判を呼んでいた菊池幽芳の『己が罪』にあやかって付けられたと思われる。他にも『新己が罪』(多数)とか『人の罪』(小栗風葉)などもあった。 描かれる三つの家族のそれぞれが高利貸(あいすと呼ばれた)からの借金で苦しんでいる。娘を芸者に出したのも窮余の金策のためである。高利貸の商売は金利の高さの上に諸手数料で差し引くという極悪非道なもので、昭和末期に自殺者まで出した「サラ金」問題に通じる明治期の暗黒面だった。物語の筋の骨子は、青年が貧困から脱すべく、芸妓の支援を受けながら勉学に励み、見事司法官に合格するまでということになるが、平民の生活ぶりを含め、…