「私、考えてる場所があるから」 まつりが前に出た。気を取り直した。 香坂城ホールの前、噴水広場がある。 大きなコンサートがあると、観客がたむろする場所だ。 ファンが集まって代表曲を歌ったりする。 「なるほどな」 大熊が頷く。もっちーも「いいじゃない」と言う。 まつりが僕を見た。 「どこだっていいよ」 「あれえ、五月女さん、彼氏があんなこと言ってますけど。 気に入らないみたいですが」 大熊がからかう。まつりが真に受ける。あわてて僕は付け足す。 「だから、いいんだよ。ここで歌ってる人、たくさんいるから。 比較されるなと思っただけ。どこでやったって緊張するし」 あまり、フォローにならなかったらしい。…