訓読 >>> 1807鶏(とり)が鳴く 吾妻(あづま)の国に 古(いにしへ)に ありける事と 今までに 絶えず言ひ来る 勝鹿(かつしか)の 真間(まま)の手児名(てごな)が 麻衣(あさぎぬ)に 青衿(あをくび)着け 直(ひた)さ麻(を)を 裳(も)には織り着て 髪だにも 掻きは梳(けづ)らず 履(くつ)をだに 穿(は)かず行けども 錦綾(にしきあや)の 中につつめる 斎(いは)ひ子も 妹(いも)に如(し)かめや 望月(もちづき)の 満(み)れる面(おも)わに 花の如(ごと) 笑(ゑ)みて立てれば 夏虫の 火に入るがごと 水門(みなと)入(いり)に 船漕ぐ如く 行きかぐれ 人の言ふ時 いくばくも…