■特攻開始 昭和19年(1944)10月,アメリカ軍のフィリピン反攻に対して,日本海軍は陸上基地航空兵力である第1,2航空艦隊を主力として戦った。しかし,航空母艦 (空母) 約 15隻を基幹とするアメリカ機動部隊の機動力と集中的打撃力,特に艦隊におけるレーダの進歩と警戒艦の配備,情報指揮通信組織の完備によって,陸上基地攻撃隊の戦闘機,爆撃機,雷撃機の編隊は,攻撃目標 (アメリカ空母) を視認する以前にアメリカ戦闘機の優位からの攻撃を受け,なんらの戦果をあげることなく撃墜されるという状態であった。 第1航空艦隊司令長官大西滝治郎中将は,いずれにしても生還を期待できないならば,小数機によって防空陣…