佐々木孝浩・佐藤道生・高田信敬・中川博夫編『古典文学研究の対象と方法』(花鳥社)という論文集が出ました。察するところ鶴見大学文学部創設60周年記念と中川さんの定年記念とを兼ねた企画かと思われ、38人の論文を収めた920頁(重さ1.5kg)の論集です。本のことー書物・伝本・断簡ー、和歌と歌学、物語・随筆・説話、漢詩と漢学、連歌と俳諧、近世の雅俗、という部類が設けられていますが、いずれも文献を扱う立場に拠っており、相互乗り入れが可能な、緩い枠組みでしょう。 どれも力作で有益ですが、まず平藤幸さんの「『平家物語』伝貞敦親王筆切ー紹介と考察」を読みました。平家物語八坂系一類B種本の断簡で、維盛と重衡の…