茨城県出身。1966年生まれ。 お茶の水女子大学人文科学研究科修士課程修了。 1995年、第6回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作『ムジカ・マキーナ』で作家デビュー。以降、音楽や舞踏などの芸術をテーマに、中世・近代西欧の史実に現代の科学技術を大胆に外挿した歴史改変小説『カント・アンジェリコ』『ヴァスラフ』などで高い評価を得ている。他の作品に、『架空の王国』『ウィーン薔薇の騎士物語』など。 夫はロシア映画研究者の井上徹。
グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行 (Kindle Single) 作者:高野 史緒 Amazon Publishing Amazon 拙評 あらすじ 主な登場人物 高野史緒(たかの ふみお)さんのプロフィール(本書の紹介文より) 著者の作品 拙評 なんといえば、いいのか。読んだ後はノスタルジックな感じが残った。著者と近い年代だからだろうか、ここで描かれる風景には見覚えがある。三丁目の夕日のような通りを走ってツェッペリン号を追いかける。だが装着している拡張現実装置もやや最先端ではないような見栄えなところもうっかりノスタルジックだ。そして拡張現実装置で感じた祖母の重みと感触を、「気持ち」と解釈して…
高野史緒氏のまぜるな危険を読んだ。本書は短編集で、「アントンと清姫」、「百万本の薔薇」、「小ねずみと童貞と復活した女」、「プシホロギーチェスキー・テスト」、「桜の園のリディヤ」、「ドグラートフ・マグラノフスキー」の6編が収録されている。本書のタイトルが表しているように、ある物語と別の物語を融合したらどうなるのかという実験的な小説が収録されている。ミステリー的な展開をする小説もあるが、純粋なミステリーではなく、オチはSF的になっている。が、科学的な知識が必要なわけではなく、なんとなく不思議な感じで終わっているものが多い。混ぜている物のうちの一つがロシアに由来しているのは著者がロシアに傾倒している…
まぜるな危険 作者:高野 史緒 早川書房 Amazon 『まぜるな危険』高野史緒著を読む。 作者の『カラマーゾフの妹』は、ドストエフスキーの未完に終わった小説『カラマーゾフの兄弟』の勝手に続編。奇抜な発想に感心したが、長篇に仕立てあげた作者の筆力にも感心した。 この本は同じ手法で書かれた短篇集。「ロシア文学+SFのリミックス」と表記されていて、各篇の巻頭に作者がネタ元をバラしている。 リミックス、パロディ、パスティーシュ、マッシュアップ、類語はいろいろあるが、そこになぜかお笑いのトム・ブラウンの合体ネタも浮かび上がって来た。要は面白いか、楽しめるか。で、ぼく的には堪能できた。以下、各篇を手短に…
大天使はミモザの香り 作者:高野 史緒 発売日: 2019/11/20 メディア: 単行本 時価2億円のヴァイオリンミモザがレセプション会場の控室から消えた。 アマチュアオーケストラの第2ヴァイオリンアラフォー地味美人とクラッシック知らずの無自覚な天才高校生。 二人のやり取りとミモザの持ち主公国の殿下ほか怪しいんだか善人なんだかよくわからない登場人物たち。 ぽんぽんとお話は進んで敵と見方が入り混じって誰もが結構たぬき。
毎週日曜日は、この一週間に書評に取り上げられた本を紹介しています。(書評の内容については各誌をご覧ください。) 今週の書評本 ◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数タイトル 著者 出版社 税込価格 書評掲載回数(2回以上のもの) ◆朝日新聞: 5/7 朝刊 23 冊 古寺巡 和辻哲郎 ちくま学芸文庫 1,320死者の書 折口信夫 角川ソフィア文庫 1,012火定 澤田瞳子 PHP文芸文庫 968鹿男あをによし 万城目学 幻冬舎文庫 755ランボー怒りの改新(「満月と近鉄」所収) 前野ひろみち 角川文庫 704橋のない川(一) 住井すゑ 新潮文庫 1,045言語学バーリ・トゥード Round 1…
高野史緒はこの作品でデビュー 1995年刊行作品。第6回の日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作に加筆修正したもの。作者の高野史緒(たかのふみお)は1966年生まれの小説家。本作『ムジカ・マキーナ』にて作家デビューを果たしている。エスエフ要素の強い歴史改変小説を数多くてがけ、2012年の『カラマーゾフの妹』では第58回の江戸川乱歩賞を受賞している。 本作の文庫版は新潮社からは刊行されず(ファンタジーノベル系作品にありがち)、2002年にハヤカワ文庫より発売されている。 ムジカ・マキーナ (ハヤカワ文庫JA) 作者:史緒, 高野 早川書房 Amazon ちなみにこの回の大賞は池上永一の『バガージ…
『新本格ミステリはどのようにして生まれたきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』(太田克史編/星海社)が、3月31日に発売されました。【新刊案内】『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』情報公開しました。講談社ノベルスを牙城とし、新本格ミステリ・ムーブメントを牽引した名編集者・宇山日出臣が成し遂げた仕事の世界を、錚々たる関係者が今ふたたび照射する!https://t.co/sMJvb4L7Il pic.twitter.com/u4bsY7tp9Y— 星海社 (@seikaisha) 2022年3月2日 上記ツイートの通り、追悼文を寄せたのは錚々たる顔ぶれであ…
思うように小説が進まず、今日も小説ばかり読む。柴田勝家の『アメリカンブッダ』表題作を読んだ。SFとしての広がりは短篇集内で頭抜けている作品。仏教とネイティブアメリカン、仮想現実。一読で語るのは難しいな。理解はしたけど、細かく語るには再読が必要。 高野史緒『混ぜるな危険』も読んだ。ロシア文学とその他の小説や歌舞伎のリミックス短篇集。ロシア文学大好きっ子の私からするともう全作が「あ、好き」となる。いちばんは「小ねずみと童貞と復活した女」かな。「白痴」×「アルジャーノンに花束を」×「屍者の帝国」のリミックス。物語としての強度がすごい。それぞれの作品の要素が明確にわかる、なのにそれぞれの作品に引っ張ら…
更新が遅れに遅れている極私的回顧ですが、うまく想がまとまらなかったので、2021年度は「思想・評論」「アート」をとりやめにして、文芸系にいきます。ほとんど読者のいない場末ブログですが、細々と更新していきますので、飽かずお付き合いいただければ幸いです。 極私的回顧第27弾は国内SFについてのまとめです。毎度のおことわりですが、SFにジャンル分けできるものでも、作品によっては近接ジャンルのファンタジー・幻想文学などに配置している場合があります。また、テキスト作成のために『SFが読みたい』およびamazonほか各種レビューを参照しております。
エスエフ作品の刊行が相次いだ2002年の恩田陸作品 2002年刊行作品。集英社「小説すばる」に2000年11月号から2002年1月号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。サブタイトルは「FEBRUARY MOMENT」。 ねじの回転 FEBRUARY MOMENT 作者:恩田 陸 集英社 Amazon この時期の恩田陸の傾向である超長編化の例に漏れず、444頁の大ボリューム(単行本版当時)ではあるが、二段組みにはなっていないので『ロミオとロミオは永遠に』に比べるとやや少ない。リーダビリティには優れているので読み始めればラストまでは一気であろう。 集英社文庫版は2005年に登場。文庫化に…
諸般の事情でまた低調気味。 まあ仕方ありませんな ◆『HHhH』ローラン・ビネ 実際にあった、ナチス高官ハイドリヒ襲撃事件を題材にした小説。とはいえ通常の歴史小説とはやや趣が異なり、語り手が事件の取材を進めていく過程と実在の人物の歩みが重なるユニークな手法がとられている。つまり作者が、情報を欠く部分を安易に想像で埋めてよいのだろうか、といった創作論的な問いかけもあるメタフィクショナルな語りである。その分、時に滑らかに流れない事もあるが関連した人々の息づかいを伝えようという思いも感じられる、優れた作品だ。様々な表現の流れが集約するクライマックスは圧巻。また本文で、少し前に発表され同じくナチスをテ…
出勤前にシャワーを浴びようとしたら風呂が2時間以上開かず出勤を諦める。 NUカーニバルという「エロまほやく」などというはしたない呼称で呼ばれている18禁BLソシャゲをダウンロードして2時間やってみる。シナリオの感触は全然まほやくとは違う(主人公そっちのけで互いが互いに重い感情をぶつけたりしない)。至って普通に気の利いたシナリオ(FGO1章の最初らへんみたいな……?)という感じでちょっとやる気が削がれる。 真瀬もと『シャーロキアン・クロニクル(2)ファントム・ルート』を読み終える。少女小説のレーベルでこんなものが出ていた2000年前後ってすごいな、と思う(高野史緒『ウィーン薔薇の騎士物語』然り)…
伴名練氏によるSF短編小説アンソロジー。 力の入った巻頭言と後記、扉でのこの小説家はここが凄いとかあんな素晴らしい小説を残してきたとか嗚呼短編集の刊行が熱烈に待たれる――と言う言葉の連なり。SF小説とその歴史への迸る愛に圧倒されました。 そしてその熱を持って紹介されている短編はどれも粒ぞろいであり、大いに楽しませていただきました。 以下収録されている中で特に好みだった短編への簡単な感想です。 和田毅「生まれくる者、死にゆく者」 確率で死に確率で生まれてくる世界で、死に行こうとする祖父は生まれようとする孫に出会えるのか――。 まず生と死との曖昧な存在とのコミュニケーションの取り方、そして亡くなろ…
ネタバレ注意。
1.遠巷説百物語(京極夏彦) 11年ぶりのシリーズ新作の舞台は遠野でした。『遠野物語』の現代語訳まで出した著者ですから、遠野独特の怪異を中心とする物語を期待していたのですが、竹原春泉による日本画集『絵本百物語』をベースとする方式は崩していません。もっとも著者は独特の民話を生んだ土壌を描きたかったとのことで、座敷童衆の伝承や供養絵額の習俗などが重要な役割を果たしています。化け物遣いの小悪党としては、『前』で活躍した長耳の仲蔵や『西』のメンバーだった六道屋の柳次が主役を張ってくれています。シリーズ主役の又市もラストで登場。 2.身内のよんどころない事情により(ペーター・テリン) 中堅作家のエミール…
グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行 高野 史緒 Kindle Single 紙の本に換算すると50頁ぐらいの短い電子書籍です。正味30分くらいで読める。 女子高生の夏紀が,子供の頃に母の故郷土浦で巨大な飛行船を見たというかすかな記憶をたどって,物理学者の卵になっている従兄の登志夫が量子コンピューターで作り出した拡張現実を体験した。それは祖母が若かったころの過去――実際にグラーフ・ツェッペリン号が世界一周の途中に立ち寄った昭和初期の土浦の風景――と双方向につながっていく。 古く懐かしいような昭和の町並みが夢のように立ち現われ,量子コンピューターが介在しなければ美しいファンタジーとしても読める。お祖…