茨城県出身。1966年生まれ。 お茶の水女子大学人文科学研究科修士課程修了。 1995年、第6回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作『ムジカ・マキーナ』で作家デビュー。以降、音楽や舞踏などの芸術をテーマに、中世・近代西欧の史実に現代の科学技術を大胆に外挿した歴史改変小説『カント・アンジェリコ』『ヴァスラフ』などで高い評価を得ている。他の作品に、『架空の王国』『ウィーン薔薇の騎士物語』など。 夫はロシア映画研究者の井上徹。
2007年に鎌倉の公園で。十六年経って、例えばここに写っている子供が当時4歳だったとするといまは二十歳になりました。その間、わたしはほぼ毎日写真を撮り続けていて、撮る写真は何年経っても変わり映えしない。やれやれ、という感じがしますね。 先日、武蔵野美術大学まで片道二時間以上をかけて電車で移動しているときの往路に、電車内で読書をしよう!と意識的でいたのにもかかわらずバッグの中を探ったら本が入っていないではないですか。そんなことはないだろう、あれだけ、電車で本を読んでいこうと思ったのに・・・二度三度と探したけれど、本は入っていなかった。事実、夕方に帰宅したら、本は自室のベッドの上に置きっぱなしにな…
高野史緒『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』ハヤカワ文庫JAを読了。 月と火星に人類が進出しながらも、スマホはなく、インターネットは実用化されたばかりという世界に生きる夏紀。スマホも量子コンピュータもあるが、人類はいまだ月面にも火星にも進出していない世界に生きる登志夫。異なる世界に生きる二人だが、その二人には幼い頃に土浦の亀城公園にある小さな丘の上で、頭上を飛ぶ飛行船、グラーフ・ツェッペリンを見たという記憶があった。グラーフ・ツェッペリンが土浦に来たのは1929年。ふたりが生まれるよりもずっと前のはずなのに。しかも、夏紀の生きる世界ではグラーフ・ツェッペリンは土浦に来た際に爆発炎上を起こ…
高野史緒氏のまぜるな危険を読んだ。本書は短編集で、「アントンと清姫」、「百万本の薔薇」、「小ねずみと童貞と復活した女」、「プシホロギーチェスキー・テスト」、「桜の園のリディヤ」、「ドグラートフ・マグラノフスキー」の6編が収録されている。本書のタイトルが表しているように、ある物語と別の物語を融合したらどうなるのかという実験的な小説が収録されている。ミステリー的な展開をする小説もあるが、純粋なミステリーではなく、オチはSF的になっている。が、科学的な知識が必要なわけではなく、なんとなく不思議な感じで終わっているものが多い。混ぜている物のうちの一つがロシアに由来しているのは著者がロシアに傾倒している…
まぜるな危険 作者:高野 史緒 早川書房 Amazon 『まぜるな危険』高野史緒著を読む。 作者の『カラマーゾフの妹』は、ドストエフスキーの未完に終わった小説『カラマーゾフの兄弟』の勝手に続編。奇抜な発想に感心したが、長篇に仕立てあげた作者の筆力にも感心した。 この本は同じ手法で書かれた短篇集。「ロシア文学+SFのリミックス」と表記されていて、各篇の巻頭に作者がネタ元をバラしている。 リミックス、パロディ、パスティーシュ、マッシュアップ、類語はいろいろあるが、そこになぜかお笑いのトム・ブラウンの合体ネタも浮かび上がって来た。要は面白いか、楽しめるか。で、ぼく的には堪能できた。以下、各篇を手短に…
大天使はミモザの香り 作者:高野 史緒 発売日: 2019/11/20 メディア: 単行本 時価2億円のヴァイオリンミモザがレセプション会場の控室から消えた。 アマチュアオーケストラの第2ヴァイオリンアラフォー地味美人とクラッシック知らずの無自覚な天才高校生。 二人のやり取りとミモザの持ち主公国の殿下ほか怪しいんだか善人なんだかよくわからない登場人物たち。 ぽんぽんとお話は進んで敵と見方が入り混じって誰もが結構たぬき。
SF関係者に改めて拡散希望。イスカーチェリでルーマニアSFやフランスSFの翻訳で活躍され、『SFが読みたい!2020年版』で海外部門7位を獲得したササルマン『方形の円』の翻訳をされた住谷春也さんが2024年6月に亡くなられました。享年93歳。心よりご冥福をお祈りいたします。https://t.co/TevERz46FE— 高野史緒(Fumio Takano) (@fumio_takano) 2024年10月4日 ミルチャ・エリアーデやミルチャ・カルタレスクなどの翻訳者として知られるルーマニア文学者の住谷春也氏が6月9日にがんのため逝去されました。93歳でした(1931年2月5日生)。ご生前、数…
ああ、やられてしまった。そりゃ俺も「カラマーゾフの兄弟」の続編をこんな感じになるのかなと妄想したりしたものだが、もっとすごいのがここにあった。脱帽。 1874年(というのは著者が推定した事件の年代)にロシア帝国を震撼させた「カラマーゾフ家の父殺し事件」。それから13年(となると小説の〈今〉は1887年。スメルジャコフは裁判中に自死。ミーチャはシベリア流刑中に事故死している。アリョーシャはリーザと結婚して小学校の教師になり、13年前の子どもたちはばらばらになり疎遠になっている。イワンは内務省の特別捜査官となり、国内の未解決事件を担当していた。イワンはときに記憶が失せたりひどい頭痛を起こしたりチェ…
ゼルダ『知恵かり』は順調に進んでミナミの森の無からミナミノ遺跡へ。攻略サイトなどの情報をいっさい参考にせず自力だけで遊んでるのだけれど難易度は高くはないしパズル的要素も時間を気にせずじっくり考えて取り組むことができるから、ブレワイの祠を攻略するときのように楽しめている。剣士モードも使えるようになった。それにしても自分の剣に名前を書くとは… かわいいなリンク。そしてシンクの使いかたも理解したし初めてのボス戦(ダイロック)に挑む。 ブレワイの初見ガーディアンは泣きそうなくらい恐ろしかったけれど今作は絵柄もキュートだしアクション操作が上手くなくてもなんとかなるしすっかり緊張感ないまま気軽に討伐開始。…
トム・スタンデージの第一作 オリジナルの英国版は1998年に刊行されており、原題は『The Victorian Internet』。筆者のトム・スタンデージ(Tom Standage)は1969年生まれのジャーナリスト。本作が初著作となる。他にも、『謎のチェス指し人形「ターク」』や『世界を変えた6つの飲み物』が邦訳されている。 最初の邦訳は2011年にNTT出版から刊行されている。訳者の服部桂(はっとりかつら)は1951年生まれで、元は朝日新聞科学部の記者。 ヴィクトリア朝時代のインターネット 作者:トム・スタンデージ NTT出版 Amazon ハヤカワ文庫版は2024年に登場している。文庫化…
2024年7月の読書まとめ。読書メーター調べ。 計84冊、1日約2.71冊ペース。結構読めた方。 ライトノベル75冊、ジュブナイルポルノ8冊、一般文芸・ミステリ8冊、その他3冊。 こういうペースで読んでいきたい。 7月の読書メーター読んだ本の数:84読んだページ数:24166ナイス数:392定年後は異世界で種馬生活 (1) (モンスター文庫 Mま 03-01)の感想男が女に守られる「強さ」が逆転した世界で、主人公が種馬として成り上がる話。 次々と子作りして妊娠させる展開ながら、ダイレクトな濡れ場描写には踏み込まず、ちゃんと「ライトノベル」の範疇に納まっている。 「ライトノベル」でありながらハー…
高野史緒『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』(Kindle Single) 高野史緒『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』 いつも世界の「開け口」を探している女子高校生・夏紀が主人公。いまお盆で土浦に来ている。夏紀は小学生の頃、祖母の葬儀のために来たここ土浦で、巨大飛行船を見た記憶がある。飛行船LZ 127「ツェッペリン号」が霞ヶ浦に来たのは90年近く前の1929年8月のことなのに、なんで夏紀にそんな記憶があるのか。その謎を神童の従兄・登志夫が解こうとする。研究で滞在している外国から夏紀に指示し、いまここに再び現れるはずというツェッペリン号を追跡させるSF中篇。スマートフォンで従兄と会話している…
(目次) まえがき 大澤博隆 △ 準備がいつまでたっても終わらない件 長谷敏司 ー 没友 高山羽根子 ー Forget me,bot 柞刈湯葉 ○ 形態学としての病理診断の終わり 揚羽はな △ シンジツ 荻野目悠樹 △ Aになったさやか 人間六度 △ ゴッド・ブレス・ユー 品田遊 ー 愛の人 粕谷知世 △ 秘密 高野史緒 ー 予言者の微笑 福田和代 ○ シークレット・プロンプト 安野貴博 △ 友愛決定境界 津久井五月 ー オルフェウスの子どもたち 芹田小夜 ✖ 智慧錬糸 野﨑まど ✖ 表情は人の為ならず 麦原遼 △ 人類はシンギュラリティをいかに迎えるべきか 松崎有理 △ 覚悟の一句 菅浩江 …
サイボーグ009トリビュート (河出文庫 い 42-2) 作者:石ノ森 章太郎 河出書房新社 Amazon 天才マンガ家、石ノ森章太郎による不朽の名作『サイボーグ009』。その誕生六十周年を記念して、“九人の戦鬼”が終結! 豪華執筆陣が洗ったな息吹を吹き込んだサイボーグ戦士たちの活躍が、活字の世界でいま始まる。テレビアニメシリーズ第一作の脚本を務めた辻真先も特別参加。全九編収録の書き下ろしアンソロジー。(粗筋紹介より引用)2024年7月、書下ろし刊行。【収録作品】●辻真先「平和の戦士は死なず」 テレビシリーズ第1作の名エピソード、同題の最終回を、オリジナル脚本家が自らリメイク!●斜線堂有紀「ア…
メーブ✕小金『ブレイブベル』④・・・こんなに面白いのに何で、雑誌ではすでに打ち切られているんでしょうかね? カツラギゲンキ✕嵯峨あき『はっちぽっちぱんち』①・・・女子格闘物で面白い物を探しているんだけど、なかなか出会えない。続きは読む予定。 吉田覚『働かないふたり』㉜・・・好きな作品ではあるんだけど、絵がどんどん潰れていくのだけは気になる。 新井素子/宮内悠介ほか『人工知能の見る夢は』・・・人工知能をテーマにしたショートショート集だが、執筆陣が豪華。さらに人工知能の専門家の解説もあって面白い。 でも、これをみるとAIによる「面白い小説執筆」はまだ課題がありそう。 個人的な傑作は高野史緒「舟歌」…
辻真先、円城塔他著・河出文庫 サイボーグ009の物語が創作されて今年ちょうど60年、これまで3回の映画化(アニメ)、3回のTVアニメ、ラジオドラマ、そして今年は舞台などいまだに様々なメディアで展開されており、古参のファンとしては嬉しい。 オリジナルストーリーの小説は、完結編の「2012 009 conclusion GOD'S WAR」を除くと今回初めて(「―超銀河伝説」「Re:CYBORG」のノベライズ除く)。009の新作です。今回は9人の作家による競作となっています。以下河出書房hpより紹介を抜粋します。 www.kawade.co.jp●辻真先「平和の戦士は死なず」 テレビシリーズ第1作…
7月の読了冊数は読書メーターによると最終的に144冊でした。 読んだ本144冊読んだページ43371ページ こちらでは7月に読んだ文芸単行本の新作13点、文庫の新作12点、ライト文芸の新作8点の計33点を紹介しています。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。 ライトノベル編はこちら↓ ※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。 われは熊楠 われは熊楠 posted with ヨメレバ 岩井 圭也 文藝春秋 2024年05月15日頃 楽天ブックス 楽天kobo Amazon Kindle honto 野放図な好奇心で森羅万象を収集、記録することに生…
7月の読書メーター読んだ本の数:11読んだページ数:2005ナイス数:274ワインレッドの追跡者 〈ロンドン謎解き結婚相談所〉シリーズ (創元推理文庫)の感想『ロンドン謎解き結婚相談所』第4弾。今回の中心には、戦時中の情報部での活動していたアイリスの現在過去未来の恋バナというにはあまりにも血なまぐさいあれこれが。主役の二人を担当する精神科医は腕も人柄もすごく良さそうではあるけれど、二人を取り巻く他の人たちは、あの人もこの人も人格に問題ありすぎる気が。謎ときはコージーだけど、つきつめると結構シリアス。二人には幸せになってもらいたいが、道はなかなか厳しそう。読了日:07月29日 著者:アリスン・モ…
今回はここ3年くらいの間に刊行された日本人作家のSF小説で、自分が読んだ作品の中からおすすめ作品を30冊セレクトしてみました。特にSF小説読みというわけでもなく、気になった本を気まぐれに読む雑食系読書廃人なので、全てをカバーできているわけではありませんが(苦笑)気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。 ※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。 1.ここはすべての夜明けまえ ここはすべての夜明けまえ posted with ヨメレバ 間宮 改衣 早川書房 2024年03月06日頃 楽天ブックス 楽天kobo Amazon Kindle honto…
ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅 作者:高野 史緒 講談社 Amazon ゲラをまとめるのに使われる“ダブルクリップ”の話題で、読者をぐっと惹きつけるプロローグからはじまるのは、本が主題の幻想奇譚連作集。新作が出せない作家や翻訳に行き詰まるマイナー言語の翻訳家、メッタ斬りで知られる文芸評論家が書評を書けない本、元天才美人女子大生詩人の今、蔵書家が訪れた不思議な古本屋、「幻想」も「奇譚」もあるのに、なぜだか妙にリアルな気がしてしまうのは、本と本の作り手と読み手をめぐるなかなか厳しい「現実」に裏打ちされているからか。たとえばP20には、こんなくだりがある。 毎日のように出される…
ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅 作者:高野 史緒 講談社 Amazon ウナギの罠 (海外文庫) 作者:ヤーン・エクストレム 扶桑社 Amazon