続いて秀山祭夜の部もう一つの狂言『勧進帳』。云わずと知れた歌舞伎十八番の筆頭演目である。七代目團十郎が作り、九代目が完成させた狂言。しかし記録によると七代目も九代目もそれ程多く演じてはいない様である。この狂言を歌舞伎最高の人気狂言にしたのは、九代目の高弟七代目幸四郎。生涯で千六百回演じたと云われる。以後成田屋も勿論演じているが、高麗屋の上演が群を抜いて多い。謂わば高麗屋の家の芸とも呼べる狂言である。 当代では何と云っても現白鸚が千二百回近く演じて、平成の弁慶と云えば白鸚の感があった。筆者も何度か観たが、それはそれは素晴らしい弁慶であった。そしてそれを受け継いだのが、当代幸四郎である。「弁慶を演…