歌舞伎座二部を観劇。平日だったが、八分くらい入っていたろうか。この二部は玄人好みの渋い役者・演目が並んでいたので松竹に頼まれた訳でもなく心配していたが、杞憂に終わった様だ。こう云う狂言立てでお客が入るのは非常に喜ばしい。そしてその出来も満足するに足るものであった。 幕開きは『女車引』。丸本の名作『菅原伝授手習鑑』の中の「車引」の登場人物を女に仕立てた清元舞踊。魁春の千代、雀右衛門の春、七之助の八重と云う配役。それぞれ七十代、六十代、三十代を代表する女形が揃った所作事で、僅か二十分程度の小品だが、これが実に結構な出来であった。 設定としては「車引」三兄弟の妻が、本家「車引」同様に揃って見せる所作…