「今日、カシラは何があるかな」。 外祖父の代から馴染みにしている鮨屋のカウンターに腰掛けビールを註文すると、父は口癖のようにご店主に訊ねたものでした。カシラと謂うのは、身を取った後の魚の頭のこと。鯛が残っていれば「しめた」ものです。煮付けか焼くか、それとも蒸しで戴くか。出来上がりを俟つ間に刺身を少し。平貝は軽く炙って磯辺焼きでね。鮟肝はぽん酢で、紅葉おろしと浅葱を多めに。白子の天麩羅は塩が合うかな。毛蟹のグラタンも食べたいなあ。お酒も吞んで家族の会話も盛り上がった頃に、ちり蒸しで料った鯛の兜とご対面。皆しばし無言で立ち掛かります。 だんなは根からの貧乏性なので、魚料理を戴くときにも可食部分は凡…