1905年(明38)大学館刊。鹿島桜巷(おうこう)の最初期の著作と思われる。地の文は文語体で格調が高い。怪奇小説仕立ての探偵小説。松戸市郊外の河原塚に建つ怪しい邸宅をめぐる探奇譚である。この家に住む叔母夫婦を訪ねて来た書生の主人公は、その家が少し前から空家となり、夫婦の行方が知れず、化物屋敷のような奇妙な現象が起きていることを知る。彼は単身で謎を解こうとするが、探偵の知識も経験もなく、危機に瀕する。一番奇異に思うのは、悪だくみの一味の生活感の無さである。自分たちの基地を荒れすさんだ家に放置して、あたかも飲まず食わずで生存しているように見える。怪奇を作り過ぎた作者の盲点かもしれない。☆☆ 国会図…