1912年(明45)日吉堂刊。タイトルの意味は「隠し子」である。三河島の富豪がかつて保養先の千葉の鹿野山神野寺の土地の女に産ませたのだが、死を目前に遺言の執行人として寺の僧侶を指定した。その子お糸だけに血統があり、外には後妻とそれに密通した番頭がいた。お糸の身辺にも財産狙いの悪だくみをする義父たちがおり、彼女はほとんど孤立無援の状況に翻弄される。ある一味と別の一味との悪事のしのぎ合いになる。普通なら絶望で自殺するところを別の意図を持った悪人に救われるという展開もあり、読み応えがあった。筋の組み立てにかなり工夫が見られる。☆☆☆ 国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は田中竹園。 dl.nd…