荷風の日記を借りた時間旅行も、そろそろマイナスゼロ点に近づいてきた。偏奇館消滅の1945年3月10日をゼロ点にしているのだが、これからの荷風はやられっぱなしの日々となる。空襲が一歩ずつ近づいている。 このタイムトラヴェルの起点は1931年満洲事変だが、日中戦争はすでに性格を変え第二次大戦の中の中国戦線となっている。副次的な戦場ととらえられたりするが、帝国陸軍80万の兵士を釘付けにしている点で太平洋戦争中でも重要な戦略地域だった。そのため連合軍は国民党政府への支援を惜しまなかった。 日本が大戦の敗者に陣取ることになったのは、偽国家満洲や中国領土に執着しつづけたからだった。引き返す地点はいくらもあ…