🌖【源氏物語189 第10帖 賢木 1】斎宮について伊勢に下向する六条御息所。疎遠になっていた源氏も冷静でいられない。 〜斎宮《さいぐう》の伊勢へ下向《げこう》される日が 近づけば近づくほど御息所は心細くなるのであった。 左大臣家の源氏の夫人がなくなったあとでは、 世間も今度は源氏と御息所が公然と夫婦になるものと噂していたことであるし、 六条の邸の人々もそうした喜びを予期して興奮していたものであるが、 現われてきたことは全然反対で、 以前にまさって源氏は冷淡な態度を取り出したのである。 これだけの反感を源氏に持たれるようなことが夫人の病中にあったことも、 もはや疑う余地もないことであると御息所…