ロッシについては福田晴虔や三宅理一が関連図書を訳しているし、八束はじめは関係の深いタフーリの日本への紹介者であった。だから先輩が担当するものとして、ずっとぼくの興味の外にあった。ただ最近、片桐さんら若手がロッシに関心があるらしいことを知って、研究史的に、それは新しい時代を象徴しているかどうか考える気になった。 かつてアルド・ロッシには興味がなかった。そこで片桐さんの本を鏡にして自分自身を懐古的に分析してみよう。建築史研究を志した院生時代、特定の対象や特定の建築家ではなく、建築史そのものが興味の対象であった。だから研究の方法論や研究史には興味があって、それは今まで続いている。具体的にはトマス・ク…