久しぶりに指先がピアノを求めたので、 ベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」を弾いた。 ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番「月光」:ギレリス 最初の一音を弾いた瞬間から、 世界が静かに深く、広がっていく。 一音一音、 深く、もっと深く、自分の中に落ちていく感覚。 ここではない世界が私の中で広がっていく。 そして、今日はピアノを弾きながら、 何年ぶりかに、 踊りの女神様がこの「月光」とともに、 静かに舞い降りてきた。 それで、身に着けていたジーパンもセーターも脱ぎ捨てて、 ヨガ用の黒いレギンスとキャミソールだけになって、 部屋の中央に佇んだ。 大学時代の話。 授業をさぼってよく図書館に行った。 …