1986年(昭和61年)3月29日(土) 夕方~夜「おい、悠真。これはいったい、どういうことなんだよ?」 風間悠真の先輩でバンドマン、川下楽器のアルバイトの新城悟である。 悟は笑いながら悠真の肩をたたいて言った。「え? |悟《さと》にい、何が?」 10歳近く年上の悟に対して、悠真は親しみを込めて悟(さと)にいと呼んでいる。「何が、じゃねえよ。チケットだよ。この客の入り、見てわかんねえか? 女子が多いんだよ、女子が! しかもオレの大学の女子が3分の2以上だ」 悟は興奮していた。 これまで何度もライブを経験し、父親のライブハウスである『BUMP!』以外でも演奏している悟だが、100人キャパのライブ…