西條奈加さんの短編集『心淋し川』(集英社, 2020年9月)は第164回(2020年下半期)直木賞受賞作です。時代小説の連作短編集であり、全六編が収められています。 作品の舞台は江戸の一角。根津権現近くの千駄木町の外れに長屋があります。そこに住む人々が、各編の主人公です。西條奈加さんは、心町という架空の町を設定し、古びた長屋の住人を各編の主人公にしています。現在の千駄木町を編集者と訪れ、町並みや地形などを取材したときに、崖下のうらさびれた小さな集落のイメージが湧いたそうです。 心町には、まったりと淀む小さな川が流れています。どぶ川のようです。なぜか「心川(うらかわ)」という趣のある名前が付けら…