W君はブロードウエイの森村ブラザーズの近くのワシントンプレスにある英国人の婆さんが経営している下宿屋へ案内して呉れた。彼女の名前はミセス・チャザムといって五十才位のデブデブ肥った大きな人だった。(Mrs.Chatham 74 WASHINGTON PL., N.Y.) この下宿屋は森村組代々の日本人が世話になる家で婆さんは、日本人の気質をよく知っていた。私は話も出来なかったがとても親切に日々の事等を手にとる様に教えてくれた。 室は二階の三畳位の表側の細長い窓のある部屋で、折り畳み式のベッドがあった。 早速鍵を一個渡して呉れた。之は入口用の物で帰った時は黙って自分の部屋へ入れる様になっている。食…