森の中で、弱っている黒い鳥に回復薬を使う。それだけの行為だ。相手は小さく、放っておけばそのまま死ぬ。騎士家に生まれたフィーア・ルードにとって、迷う要素はどこにもなかったはずだ。 ところが次の瞬間、死にかけているのは彼女のほうになっている。助けた生き物は、鳥ではなかった。 意識が薄れる間際に浮かんできたのは、身に覚えがないのに自分のものだと分かる記憶だった。三百年前、彼女は大聖女と呼ばれ、騎士たちと並んで戦い、そして魔王の右腕に殺されている。思い出したのと同時に、当時の力までフィーアの中へ戻ってくる。 普通なら、ここが快進撃の始まりになる。無才と言われ続けた少女が、桁違いの力を手に入れる。ところ…