彼は存在しません ミナは、彼を忘れていない。 彼との出会いは、二〇一九年の冬。インスタのDMに、一通のメッセージが届いた。 「こんにちは、突然のメッセージごめんなさい」 怪しい。そう思いながらも、ミナの指はアイコンをタップしていた。 名前はジフン。ITベンチャーCEO。 高層ビルを背にスーツで腕を組む写真。高級外車のハンドルを握る腕に、光る腕時計。ジムの鏡越しに晒された肉体。プールサイドの水着姿。 ミナの指が、そこで止まった。 怪しいという気持ちは、気づけば興味に変わっていた。 LINEを交換し、毎朝のあいさつが始まった。夜には甘い言葉が交わされるようになった。 ある日、画面に一文が表示された…