生体を構成するアミノ酸20種のうち、グリシンを除いた19種には光学異性体と呼ばれる、物理的・化学的な性質は全く同じものが2種類存在する。実際に、アミノ酸を化学的に合成するとL型とD型が一対一の割合で生成される。生物ではこのうち、L型と呼ばれるアミノ酸によって構成されている。D型は非天然型であり、近年まで生物のシビアな立体特異性によって完全に排除されていると考えられてきた。しかし、ここ数年の分析技術の向上に伴い、ヒトを含めた種々の生物の細胞内からD-アミノ酸が検出されている。この非常識な化学物質の生理的意義を知るべく、日夜研究が行われている。