彼(徳田秋声)の作品はよく無道徳・無思想と言われ、フィロソフィーがないと言われたが、無為・無道徳に徹するところにかえって「道」を見出そうとする東洋古来の考えが、彼の思想であり、道徳であったとも言えよう。 山本健吉「日本現代文学全集」「作品解説」 (野口冨士男「徳田秋声伝」で引用) ある禅僧が、精神分析をやっている人に、 「精神分析なんて何の役にも立たん。自我というのは記憶と思考のカタマリで、ゴミの山のようなものだ。ゴミをいちいち分析するのではなくて、丸ごと捨ててしまえ」 と言ったら、その人は、 「私はゴミを分析することに歓びを覚えるのです」と答えた。 どっちに共感しますか。ぼくは以前は前者(禅…