烟る街。それは煙か霧か。視界はどこまでも開けず、自分の足元すら覚束なくなってくる。何かをつかもうと伸ばした腕の行く先すらもどこかへ消えてしまうかのように。心許ないのは視界を塞ごうとするこの白い靄のせいか。はかなくも地上の民。吐く息もまた白く、どこかへ行こうとする目的も失ってしまった。終着点はもはやどこでもよい。全てはただ独り。食す、溶かす、排す。人としてあまりにも原始的な行為と日々の中では、時間の経ち方すらも忘れてしまう。足枷なら無い。気の向くままに向かえばよい。しかしどこへ。与えられずの行き先と、とどまることを許さない時の脅迫状。怯え、逃げ出す先すら見えはしない。それでも遁走。闇雲な足の運び…