侍ジャパンが連覇へと向け、順調に突き進む東京ドーム。 その熱狂の檻の中で、ひとりだけ、流れる時間の速さが違う男がいた。打席に立った瞬間に空気が冷え、マウンドの緊張が一段階跳ね上がる。李政厚。かつて名古屋のファンが「風の息子」と呼んだ李鍾範の血を引きながら、その息子はすでに、風そのものになろうとしていた―― 日本において「親子二代の成功」は、時に残酷な呪縛となる。つい先日、WBC特番に出演した落合博満も苦笑しながら口にしていたが、長嶋茂雄という巨大な太陽の影で苦悩した一茂のように、偉大すぎる父を持つ者は、その比較という名の濁流に飲み込まれがちだ。だが、李政厚にその陰りはない。韓国で「安打製造機」…