抑制美 初めて聴く、米澤めぐみのピアノである。 ひたすら、淡々と、抑揚も抑え気味で、過度に盛り上げることもない。 延々とたゆたうように、むしろ朴訥とした印象で、修行僧のように、 無表情で通り抜ける感覚が心地よい。 華美で、ダイナミズムに満ち溢れたアプローチをする アーティストも時には良いが、 最近の私の好みは、こういうピアノの弾き方にあるのかもしれない。 以前紹介した、ハロルド・タンゴに通じる、不思議さと妖艶さ、 とりとめなく、掴みどころのない魅力があるように思う。 もう少し、具体的に表現してみると、 タッチの柔らかさ、フレーズの断片性、弾き込み過ぎない抑制力、 全体を覆う大らかさ、多様な間合…