『大阪ハムレット』3巻

★ 買ってきました。この本、あまりにも泣いたんで1〜2巻を親にもプレゼントしたという一品ですが、3巻もまた、えらいことになっとりました(←読んだばっかなので変に関西弁ぽいものが混じる)。


 森下裕美は、この前に『夜、海へ還るバス』という作品でかなりダーク全開な、後味のすっきりしない作品を出していて、今これが描きたいんだというのはひしひしと伝わってきたんだけど、どこか消化不良な感じもして、この路線はちょっと読むのがつらいなと思ってた。『大阪ハムレット』は根にダークな部分がありつつも、終わりはカラッとさせてしっかりエンタテインメントに消化しているような感があり、私はこれこそが「ダークな部分も描きながら、読ませる」マンガの真骨頂であり、ここまで突き抜けたことがすごいと思っていたので、『夜、海へ〜』は突き抜けてきた道を逆方向にちょっと戻ったような印象を受けた。


 『大阪ハムレット』3巻は帯に「凄味増量」と書いてある通り、かわいらしい話が少なく、特に最後の作品はダークなところがドロッと入ってて、後味さっぱりとはいかなくなってる。


 凄い面白いことには変わりないし、凄いマンガであることには変わりないのだけど、私はあっさり、さっぱり、わかりやすいものがどれだけ凄いかということを最近は強く実感しているので、根底に流れるダークさが『大阪ハムレット』の強い魅力なんだけど、あまりダークさが前面に出てきすぎると、ちょっとつらいかなと思う。人間のダークな部分と、どう笑ってつきあっていくかということを1〜2巻で教えられたような気持ちになっていただけに、3巻には少し戸惑った。


 でも、もしかすると森下裕美は、人間の善の部分とダークな部分、とかいう話しじゃなくて、煎じ詰めればその二つは全部一緒なんだ、何がいいとか悪いとかじゃないんだ、というようなところまで描きたいのかもしれない。と思う。だったら、そこまで見てみたい。『大阪ハムレット』は、誰が何と言おうと、魂こもったマンガなんだから、どんな展開になろうと、それが私の求めていた方向ではなくても、見届けたい。


 私は「楽しんで読める」って、とても高級で大事なことだと思うけど、そこから外れたとしても『大阪ハムレット』だけは読むと思う。「なにか、ものすごく重要なことを描こうとしている」「そしてそれは、今までに誰も見たことのないような形のものかもしれない」という、不穏な期待はふくらんでいくばかりだからだ。

大阪ハムレット 3 (アクションコミックス)

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夜、海へ還るバス (アクションコミックス)

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