世界で最もコストパフォーマンスに優れたソフトウェアの外注先

 拉致問題言論統制、飢餓、軍事挑発、経済制裁など、暗い話題に事欠かない北朝鮮であるが、ヨーロッパ諸国からはソフトウェア開発の外注先として注目が集まっていることをご存知だろうか?

 北朝鮮は2000年以降、金正日総書記の「コンピューターを扱えない人間は21世紀の3大馬鹿の1人だ」(残りの2つはタバコを吸う人間と、音楽の教養の無い人間)という指導のもと、優秀なIT人材の輩出を国家戦略のひとつに掲げており、国内の大学でコンピューター技術を学んだ優秀なエンジニアを集めてソフト受託開発を次々に誕生させている。

 これらの北朝鮮のソフト開発企業は、インドを除く他の発展途上国ではなかなか見られない従業員1000人以上という規模の大きさと、世界最高レベルの技術を世界最低レベルの賃金で利用できるというコストパフォーマンスが特徴で、Flashや携帯ゲームの開発から3Dアニメやデータ入力などのニッチな分野まで幅広く対応している。

北朝鮮最大級のソフトウェア開発受託企業「Nosotek」。国家のインターネット通信規制の関係で、中国のネットワークを経由して海外企業とやりとりしている。

 2007年にヨーロッパ資本によって平壌に設立されたNosotek社もそのひとつで、ここでは英語圏の人材をプロジェクトマネージャー据えることで、ヨーロッパ企業と社内スタッフとのコミュニケーション問題を解消しながら業務を進めている。

 社会主義国家におけるカスタマサポートやユーザービリティに対する考え方の違いや、海外企業との協業の経験不足から来るスピード感の違いなど、まだまだ解決すべき問題も多いが、スタッフの技術レベルは高く、ドイツのAppStoreでは北朝鮮製のアプリが週間Top10入りするなど発注先のヨーロッパ企業からも高い評価を得ているという。

 一方で、アメリカの企業も北朝鮮のソフトウェア開発企業に注目しはじめているが、政府が北朝鮮企業との協業を法律で禁止していることもあって協業の実現には至っていない。

 インターネットの登場で国境を越えてのソフトウェアの受託開発が可能になった現在、世界に通用する技術を持つエンジニアを多数抱える北朝鮮が、ヨーロッパを中心にその存在感を増してきているようだ。

情報ソース:The World's Most Unusual Outsourcing Destination | PCWorld