本澤二郎の「日本の風景」(1312)

徳洲会事件は不発?>
 「100億円もの使途不明金事件」「20億円の持ち逃げ事件」「闇金融事件」「公選法違反事件」などの疑惑が発覚している徳洲会事件に対して、関係者は戦々恐々の体である。警察が動き、国会で追及されると、平成の疑獄事件となろう。だが、目下のところ、その可能性は低いことがわかった。不発に終わる可能性さえ見えてきた。



<野党もズブズブ?>
 徳洲会事件の行方について関心を抱いている市民は多い。全国に67もの大病院を有する医療法人、優遇税制の塊の病院である。それを逆手にとっての悪の数々が、金庫番によって暴露されたのだから。法人としての資格喪失事件でもある。
 検察や警察にとって、この事件は宝の山である。しかも証拠は山のように揃っている。ああ、それなのに?
 中国だと大変であろう。ネットに数千、数億の市民からのアクセスがあるだろう。当局は、とても隠ぺいなどできない。日本はそうではない。そのレベルにはるかに遠いからだ。日本人の民度は、悲しいことに恐ろしく低い。民主主義が確立していないからだ。
 雑誌の「東洋経済」が、既に大きく報道している。だが、新聞テレビは沈黙している。これも不可解なのだ。
 もっと不思議なことは、議会の沈黙である。与野党とも世紀のスキャンダルを国会で取り上げていない。「これが爆発すると、自民党参院選で敗北する。どうして野党は追及しないのか」と元自民党秘書は首をひねっているほどだ。
 民主党の内情に詳しい事情通は「今の民主党は、かつての民主党ではない。自民党と同じ体質。徳洲会ともズブズブ」と指摘した。本当だろうか?共産党はどうか?「あそこはガス抜き政党。自民党のために候補者を大量出馬させるだけ。昔のような赤旗も存在しない」とも決めつけた。なんということか。
 以上の事情通の指摘は、確かにそうかもしれない。無気力なのは有権者ばかりではない。議会・野党もそうなのだ。
<鹿児島県警は買収された?>
 捜査当局はどうか。これがまたお話にならない。
 証拠がごろごろ転がっている選挙違反事件は、鹿児島県警の担当である。「鹿児島県警が捜査を始めたという話を聞かない。どういうことか」と政界雀は口をとがらせている。「県警は買収されている」とする見方も。
 「国会議員事件は警視庁の枠。その警視庁も動いてはいない」というのである。事実とすれば、法治国家が泣いてしまうような事態・事例であろう。
警察庁がストップ?>
 以前、自民党の大物議員の支持者が次々と逮捕される事件があった。九州は確か宮崎県である。たまたま内閣に、警察庁長官を歴任した人物が官房副長官をしていた。大物議員は彼に「なんとかしてくれ」と泣きついた。
 間もなく、官邸から宮崎県警本部長に緊急の電話がはいった。「君、そんな捜査をする金はないよ」という元警察庁長官の一言で、この選挙違反事件は止まってしまった。
 こうしたことからすると、鹿児島県警に対して警察庁が圧力をかけているという推測も成り立つのだが?断定はできないが、安倍・官邸は、警察庁に対して止めに入っているかもしれない?
<爆発すると、自民敗北・維新消滅>
 はっきりしていることは、この徳洲会事件が暴かれると、6月の都議選挙と7月の参院選挙で自民党の圧勝は消えてしまうだろう。会見のための3分の2確保に失敗する、と専門家はみている。自公の敗北は必死となろう。むろん、石原代表の維新の会は消滅するだろう。ただでさえ橋下・従軍慰安婦発言によって、国内はおろかアジア・国際社会から袋叩きに遭っている維新である。
 極右政党は安倍・自民党と維新の会ということが、広く欧米社会においてさえも知られてしまっている。

 平和を願う庶民・大衆は、この事件の解明を期待している。しかし、ナショナリストを政権のトップに押し上げることに成功した財閥にとって、彼らの思い通り、原発輸出と原発再稼働に突進してくれる内閣は、この上なく貴重なのだ。
 「新聞テレビの取材合戦を抑え込んでいる」と見たい。インターネットが中国のように普及、それを活用する市民が多くなれば、財閥と政府の暴走を止めることができるのだが。
2013年5月30日7時50分記