華麗なる一族

華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫)

華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫)

読んでいるとき、これほど苦痛を感じたのも久しぶりだ。
読者を物語の流れに引き込むようなドライブ感がなく、取材したレポートを読まされているような
小説だった。


誰かが書いていたが、丸を説明するために線で○を描いて、これですよ、というのが「説明」で、
周りを黒く塗って○を浮かび上がらせるのが「描写」なんだそうだ。
山崎豊子の小説は基本的に「説明」だけで書かれており、そこに文学的な要素がないことを批判
する人も多いだろう。


だが、彼女の小説をたたき台にしてドラマやマンガにすると面白いのも事実で、「白い巨塔」の大
ヒットは記憶に新しいところだ。
この「華麗なる一族」のドラマにしても、突っ込む部分は多々あれど、視聴率はいい。


つまり、文学作品としては三流だが、ドラマの原作としては一流ということだろうか。
もちろん、そのまま映像化するのではなく、ちゃんと脚色すれば、の話だが。


今だと、ある業種を徹底的に洗って、それを分かりやすくプレゼンできる取材専門のプロダクショ
ンがあればいいのかな。
そういうリサーチの強度が、ドラマに厚みを与えるといいのだけど。


以下、ネタバレするので隠します。

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