一斗茶太的日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-02-23 みかの原わきて流るる泉里香石川恋に恋しかるらむ(モグラ百人一首)

[]スパゲッティーの年に スパゲッティーの年にを含むブックマーク

家の近所に、小ぢんまりとしたトラットリアがあった。入りやすいけれど、ちょっとこじゃれていて、ピッツァ(気恥ずかしい言い方だけれど、あれは「ピザ」と呼ばれるそれじゃなくて、ちゃんとした「ピッツァ」だった)がおいしい店だった。だからときどき行っていた。

しかし先日、その店が突然、閉店していた。毎日とまではいかないが、頻繁にその店の前は通っているので、もし「◯月◯日で閉店します」的な張り紙が出ていたら気が付いたはずだし、閉まるんだったら最後に食べに行こうと思ったはずだから、本当に予告なしの閉店だった。

「当店は、◯月◯日で閉店いたしました。2年間のご愛顧ありがとうございました。なお、2月下旬からパスタ専門店としてリニューアルします」

そんな張り紙が、ひっそりと、閉じたシャッターに貼られていた。

あまりに唐突な印象がしたので、ちょっとGoogleなどで検索してみたら、店長のものと思われるブログが見つかった。そのブログの閉店についてのエントリには、こんな記述があった。

「◯月◯日をもって閉店いたしました。突然の、そして事後のご報告で本当に申し訳ありません。事前にお知らせしなかったのは、してしまうと、自分の決心がぶれてしまいそうだったからです」

どう見ても、前向きに閉店、そしてパスタ専門店への転身を決めた人の書くことではなかった。そして、店長(と思われる人)を個人的に知るとおぼしき人のコメントと、それへの返信も気になった。

「お疲れさん。なんだか、いろいろ察したわ」

ありがとう。うん、察して」

何があったかは知らないし、推測することもできないが、私が気に入っていたトラットリアが、何らかの事情で閉店せざるを、そして業態を変えざるを得なかったことだけはわかった。

数日後、店の前を通ったら、その店は、店名はそのままに、ロメスパ専門店としてオープンする旨の告知と、出される予定のメニューが貼ってあった。

むろんロメスパロメスパでおいしいし、私も好きだが、もともとのトラットリアとはずいぶん隔たりのある転身だ。ちらっと、前に読んだブログエントリが頭をよぎった。

メニューには「なつかしのナポリタン」「デカ盛りも可能」「トッピング イシイのハンバーグ150円」などの文字が書いてあった。なんだか、少しやりきれない思いになった。店名が変わらぬまま、というのも、やりきれなさに拍車をかけた。

先日、リニューアルオープンしたその店に初めて行ってみた。入るときや、頼むときに、なぜだか少しどきどきした。注文したのはデカ盛りのナポリタン。あらかじめ茹で上げてあるスパゲッティは、うどんのように太くて、真っ赤だった。以前のトラットリアだったら、決して出すことのなかったようなパスタだ。

ひと口食べてみた。おいしい。懐かしい、とか、珍しい、というのではない味がした。あえていうなら、「やさしい」味がした。アルデンテのカペッリーニスパゲッティなら、太くてデカ盛りのナポリタンスパゲッティだ。どちらが上で下、ということはない。私はどっちも好きだ。でも、確かに後者のほうが、私には「やさしい味」に感じられた。

いつかまた、かつてのようなトラットリアをどこかで開けるようになるのか。それとも、このままロメスパ専門店として続けていくのか。それはわからないけれど。

でも、私はまた、ときどき「やさしい」スパゲッティを食べに行きたいと思う。




あきらめた夢のひとつもあるほうが誰かに優しくなれる気がする (柳澤真実)。人気blogランキング

2017-11-05 ドナルド・トランプ来日す。イヴァンカ娘においてや

[]母校のこと 母校のことを含むブックマーク

先日、とりたてて用事はなかったが、自分卒業した高校まで行ってきた。母校に来るのは、たぶん8年ぶりぐらいのことだ。

人間だって、8年も会わないでいれば、最後に会ったときと比べて様子や事情などがけっこう変わる。学校だってそうだ。

8年前と大きく変わった点が二つある。一つは、校舎が全面リニューアルされ、大変立派になっていたことだ。

シンボルだった、高く白い時計塔は、(かつてのものとほぼ違わぬものはいえ)新しく建て替えられていた。門を入ってすぐのところにあった噴水は跡形もなく、合格発表の日に私が自分受験番号を見つけた掲示板が立てられていた事務棟も、立派な建物に生まれ変わっていた。中には食堂ホール図書館がある由。建物の中にまでは入らなかったが、窓からうかがえる図書館の様子は、蔵書も多くて、明るく、利用しやすいものに見えた。学校トイレに行かない日はあっても、食堂図書館に行かない日はない高校時代を私は送っていた。当時の図書館は、開架式ではあるものの、かび臭くて薄暗く窓もない、倉庫みたいなところに書架があり、決して利用しやすいとはいえなかった。だから図書館で私以外の生徒を見かけることはあまりなかったが、そこで私は本を読み耽ったものだった。

食堂も、私の頃とは違ってきれいで、おいしく栄養のバランスが取れたメニューがあるのだろう。揚げ餃子を卵でとじて、それを丼めしの上にぶちまけた「ギョーザ丼」(略して「ギョー丼」)や、メンチカツの上にミートソースがかかっているという無国籍感満点なのに、なぜか「メキシカンランチ」と名付けられていた不思議メニューなど間違ってもないはずだ。なぜならその食堂は、私の頃とは違って、女子生徒も利用するからだ。

もう一つの大きく変わった点は、共学になっていたこである*1。一昨年度から付属中学ともども男子校から共学となり、その効果や、鉄道事情の変化によるアクセス向上、最寄り駅の再開発などにより、近年ではちょっとした人気校らしい。偏差値も、私が入った頃に比べればけっこう上昇しているのだという。

母校の発展は喜ばしいことだ。少子化で、私立公立も生き残りをかけてしのぎを削る中、清潔で快適で新しい、行き届いた設備で学べる環境は、生徒にとっても学校にとっても大きなアドバンテージだろう。

ただ。

こんな立派で隙のない学校に、かつての私みたいな、勉強スポーツも大してできず、女の子とも縁がなくて、読書クイズぐらいしかやることのなかったような、さえない生徒の居場所はあるのだろうか。それがちょっとだけ気がかりだった。それとも、そんなしょーもない生徒は、人気校になった今はいないのだろうか。リア充ばっかりなのだろうか。

公立に毛が生えたような、クソぼろくて小汚くて男臭い学園で、友達もろくにおらず、でも女子もいない環境だったからクラスメイトにいじられ、からかわれつつも排斥はされず、細々とクラスの中に生息して、ひたすら読書をし、早く大学に行きたいとひたすら願っていた当時の私のことを思った。いま、あいつがこの学校の生徒だったら。明るくて蔵書の多い図書館を喜んだだろうか。小ぎれいでおいしい学食を楽しんだだろうか。

真新しい芝のグラウンドで、女子生徒が体育の授業をしていた。移転されたわけでないとはいえ、私が通った学園は、なくなってしまったのだと思った。どこに行っても、あの学校はもうない。

一度でいいから、隣に女の子を連れて歩いてみたいと願いながら、毎日一人ぼっちで通った通学路を、私は駅へと戻っていった。



まぁ、廃校とか統廃合されるよりはましなのだろうけど。人気blogランキング

山岳救助犬山岳救助犬 2017/11/05 19:39 時間が経つと色んなことが変わりますね。これからどんな変化があったとしても、一斗さんの後輩達が、取り立てて用事が無くても、卒業してから行ってみたくなるような、そんな学校であり続けますように。

ChattertonChatterton 2017/11/08 21:04 >山岳救助犬さん
変わりますね。通った大学も大幅に変わり、数年後にはとうとう建物も全面的に建て替えられてしまうそうです。
変わるものがあり、変わらないものがありますが、未来は素晴らしいんだ、ということは、さえない高校生だった頃の私に、伝えてやりたいと思います。

2017-11-01 独立問題については、もうこれ以上語るーにゃ

[]「近所づきあわない」の罠 「近所づきあわない」の罠を含むブックマーク

いま住んでいるマンションでは、個人的に近所づきあいが全くない。もちろん、エレベーターなどで住民に会えば挨拶ぐらいはするが、隣の住民の顔も名前も本当に知らないし*1、顔見知りもいない。

さて先日、近所に買い物に行ったら、会社員時代の先輩・アンザイさん(仮名)にとてもよく似た人とすれ違った。一瞬のチラ見だったから、本当にアンザイさんだったかどうかはわからないが、本当に彼だったとしても、納得してしまいそうなくらいに似ていた。

アンザイさんは、新人時代所属していた部署の直属の先輩で、とても世話になった人だった。よく飲みに連れて行ってもらったり、ごちそうにもなった。しかし、それと同じかそれ以上くらい、うっとうしく嫌な思いもしたので、正直、いまさら関わりを持ちたいとは思わない。以前、Facebookの「知り合いかも」に出てきたことがあって、そのときは横浜市在住となっていたか*2、もしかしたら本当にその人だったのかもしれない。

何が言いたいかというと、もしかしたらお互い知らないだけで、私とアンザイさんが実は同じマンションに住んでいるという可能性もゼロではないかもしれない、ということだ。私みたいに近所づきあいが全くないと、しばらくご無沙汰の知人と、知らず知らずのうちに偶然いっしょに住んでいてもわからないのだ。もう会いたくない人であっても、また会いたい人であっても。

もしいつか、マンションエレベーターホールでばったり出くわしたアンザイさんに、「あれ、一斗じゃん? うそ、今ここに住んでるの?」などとと声をかけられたら、と思うと。

ちょっとだけホラーな気分である



かといって、戸建てに住むのは面倒である。人気blogランキング

*1:LÄ-PPISCHみたい。

*2:以前は、現在の私と同じ沿線都内某所に住んでいた。

2017-02-14 女優なら与えられた仕事を文句言わずやレ、プロなんだろ。

[]不意打ち表参道 不意打ち表参道を含むブックマーク

あれは、表参道ヒルズオープンした年だから2006年のことだった。そうか、もう11年も前の話なのか。当時、私はフリーランス仕事をしており、あるクイズ番組の問題作成をお手伝いしていた。

その日は、表参道ヒルズオープンする前日だから2月10日のことだった。赤坂で、その番組定例会議があり、それが終わった後、同じくそ番組に参加しているリサーチャーの女性と私はカフェにいた。次週までの宿題相談をしたり、とりとめのない話をしたりしていた。

どういう話の流れでそうなったかは覚えていないが、そのうち、その女性が「一斗くん、このあと予定ってある?」と聞いてきた。悲しいかな、そんなに売れっ子ではなかった私は時間があり余っていたので、そう答えると、彼女はこう言った。

「だったら、表参道ヒルズ、見に行ってみない?」

「でも、オープンって明日でしょ?」

「うん、知ってる。外から見るだけなんだけど。だめ?」

「いや、構わないけど。ああいうところ、興味あるんだ?」

彼女は決して野暮ったかったり、おしゃれでないという人ではなかったが、派手な浮ついているような人ではなかったし、そういう流行スポットや、ハイブランドなどにはあまり興味があるようには見えなかった。だから、私はちょっと意外だった。

ちょっと行ってみようかな、と思って。悪いけど付き合ってくれる?」

そんなわけで、私たち千代田線に乗り、表参道で降りた。表参道ヒルズに着いては見たものの、当然のことながら中には入れない。外からちょっと建物を眺めて、それでおしまいである。何がしたくて彼女はここへ来たんだろう、と思っていたら

「ねえ、もう一つ付き合ってほしいところがあるんだけど」

言われるままに一緒に歩いていくと、彼女は「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」へとやってきた。言わずと知れた高級チョコレート店だ。そして、今日2月10日。そこで私は、ようやくピンときた。

「そうか、表参道ヒルズは口実なんだ。彼女は私に、少し早いバレンタインデーチョコレートをくれようとしているんだ」

次に番組会議で会うのは2週間後だから、少しフライングだけど、今日渡してしまおうということなのだ。それならそうと、早く言ってくれればいいのに、回りくどいなぁ。とちょっとうきうきしながら彼女と一緒に店内に入った。

ちょっとやそっとの義理チョコではあげられないしもらえない代物があふれ返った店内では、多くの女性真剣な顔でチョコレートを物色していた。ただ一人、私の隣にいる彼女を除いては。

「うわっ、何これ。高っ! 覚せい剤でも入ってるのかってくらいの値段だね」

「確かにおいしそうだけど、私は『キットカット』とかのほうが好きだなぁ」

いささか場違い感想を、彼女はフランクに、割りに遠慮なく口にした。私のほうが、他の女性視線を気にしてしまうほどだった。結局、彼女は何も買わずに店を出た。

本当に、何がしたくて彼女は私を付き合わせたんだろう。軽くがっかりしてとぼとぼ歩いていたら、彼女はまた立ち止まった。

「ここ、入っていい?」

そこは、新潟県アンテナショップだった。「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」よりは個人的に興味があったので素直に入っていくと、ちょうど日本酒即売会をやっていた。現金もので、さっきまでがっかりしていたのも忘れて、いろいろな日本酒を眺めていると、彼女が聞いてきた。

「一斗くんて、ここに出てるお酒、ほとんど飲んだことあるの?」

まさか。飲んだことなもののほうがずっと多いよ」

「ふーん。どれがおすすめ?」

私は、たぶん彼女自分父親にでも買っていくのだと思い、なんだったか忘れてしまったが、ある銘柄ひとつ挙げた。

「これはおいしかったと思う」

「そう。じゃあ、これにするね」

彼女レジ会計を済ませると、私といっしょに店を出た。外はもう日が暮れていた。表参道の駅まで歩いていくと、彼女原宿から帰るという。

「気を付けてね。いろいろな店に行けて楽しかったよ。ありがとう」と私が礼を言うと、彼女は私に、さっき買ったばかりの日本酒の瓶を手渡した。

はい、これ」

「え、お父さんに買ったんじゃないの?」

「うち、誰もお酒飲まないもん。一斗くんに」

ありがとう。でも、なんで?」

だって一斗くん、チョコレートよりこっちのほうが好きでしょ?」

そういう不意打ちのバレンタインデーも、この年になるととんと縁がない。ちょっと懐かしい。彼女消息は知らない。



20代最後の年でした。人気blogランキング

2017-01-03 井之頭五郎「この、て、『てんつ丼』ての一つ」(誤読のグルメ)

[]ひじきの話 ひじきの話を含むブックマーク

年末土曜日の、夕方のこと。近所に買い物に出かけた。いつもの駅前スーパーマーケットに行こうと思ったら、駅のロータリーの脇で、おばあさんが、ひじきを袋に詰めて売っていた。

以前利用していた駅では、ときどき、ひじきとかあさりとかキムチとか、そういったものを即売していることがあった。しかし、ここへ引っ越してきてから6年目になるが、そういった光景を目にしたのは初めてだった。だから、「へぇ、このへんでもこういう風にひじきとかを売ることってあるんだ」と、ちょっとだけ立ち止まって目を留めた。すると、おばあさんが「おにいさん、ひじきどう?」 とすすめてきた。

「いや、今日別に・・・

「おいしいよ。1パック200円」

と言われても私にはそれが高いのか安いのかわからない。

「でも、料理の仕方がわからないし、できないから

ひじき、好き?」

「好きは好きだよ。豆とかといっしょに煮たやつ」

「あれ、簡単から。まず水で戻して・・・

「いや、料理しないんでわかんないんだって・・・

私は抵抗してみたのだが、とはいえこんな寒空の下、あまり売れていなさそうなひじきの山を前に、ぽつねんと座っているおばあさんが少し気の毒になってきたので、なんとなく、1パック買ってしまった。作ったことなんて一度もないけど、レシピをググればどうにかなるだろう。もしダメだったら、実家母親にくれてやればいい。

「毎度どうもね。ありがとう

おばあさんはにこにこして、青いビニール袋に詰まったひじきを私に渡してくれた。

やれやれ、と思いながら、本来目的だったスーパーマーケットに行った。私は、ひじき煮物って何が入ってたっけ? と思いながら、缶詰コーナーで大豆の水煮缶などを物色していた。すると私の隣に立った女性からしかけられた。

「買わされちゃいましたね」

ちょっと含み笑いをしたその女性は、私とほぼ同じぐらいの年かさで、赤いロングコートを着て、眼鏡をかけていた。どことなく、井川遥に似ているような気がした。

「え?」

私は初め、なんのことだかわからず、誰か別の人と間違えられているのだと思って、まごついてしまった。

「買わされちゃいましたね、ひじき

彼女は、私が持っているビニール袋を指さした。

ああ、そういうことか。私は赤面した

「あ、いや、何か変なところを見られてたみたいで・・・

「断っちゃえばよかったじゃないですか」

「まぁ、そうなんですけどね」

しかし、なんだってこの女性は私に話しかけてきたのだろう? 見たことがあるような気もするが、それは井川遥に似ているからそう感じるのかもしれない。

「作れますか、煮物?」

「やったことないんでわからないです」

彼女はまた笑った。

「じゃあ、なんで買ったの?」

「なんででしょうね」

よくよく考えたらおかしくなってきたので、私も笑った。

ひじきも断り切れないんだったら、もっと大きいものごとなんて絶対断れないですよ」

「そうか、確かに」

「気をつけなきゃ」

そして、彼女は言った。

煮物、作り方知ってる?」

「いや、残念ながら」

「作ってあげましょうか?」

「ははは、いいですね。じゃあ今度教えてください」

今、まさにひじきをぶら下げて買い物来てるのに、「今度」もへったくれもない。つまりは「社交辞令」だ。そう思っていた。

が、

「3階の方ですよね?」

「え?」

ドムヒルズの。わたし、5階なんです」

同じマンションの住人だったらしい。そうか、だからどこかで見たことがあったんだ。 

「あ。ああ、そうだったんですか」

ときどき、エレベーターに乗るとき、見かけてましたよ」

「そうなんですね。すいません、覚えてなくて」

彼女は笑った。そして、

「作りに行ってあげましょうか、煮物?」

と言った。

「いや、それはいくらなんでも悪いですよ。うちの部屋、汚いし」

「じゃあ、作ってあげるから、うちに食べに来ます?」

まさか。それだって悪いし・・・

「じゃ、作って届けてあげますよ」

「いや、あの・・・

「遠慮してるんですか?」

「そういう問題じゃなくて・・・

それから3時間ほど経って、本当にその女性は私の家を訪れた。

はい、これ」

彼女は、できあがったばかりのひじき煮物を、メモ用紙に書いたレシピといっしょに届けてくれた。

・・・あのー、えー、本当にどうもありがとうございます。これ、大したもんじゃないんですけど」と言って私は、実家からもらって、まだ開けていなかったモロゾフクッキーの缶を渡した。

「ありがとう」

彼女は素直にそれを受け取ると出て行った。最後に、

「やっぱり、断り切れないんですね。気をつけなくちゃって言ったでしょ。おやすみなさい」

と笑って。

というわけで、その夜の私の食卓には、なぜかひじき煮物が乗ったのだった。

f:id:Chatterton:20170103171838j:image:w360



ひじきの鉄分が多かったのは実は鉄鍋のせい、という話が好き。人気blogランキング

xKIxxKIx 2017/09/22 17:01 こんにちは、此方には初コメントします。
この話、凄く好きです。
ちょっと電車男を思い起こさせるような、くすぐったい感じが。

ChattertonChatterton 2017/09/23 08:41 こんにちは、コメントありがとうございます。過去のエントリでも、こうしてコメントをいただけると一斗はとても喜びます。

その女性がくれたひじきの煮物のレシピには、オーソドックスな和風のものの他に、目先を変えて、ベーコンやにんにくを入れたペペロンチーノ風のものもあり(実は私、ペペロンチーノが大好物です。なぜその女性は知っていたんだろう? いくらなんでも偶然だと思うけど)、一回だけ作ってみたことがあります。美味しくできましたが、いかんせんあまり料理はしないので、一度作ったきりです(笑)。
よろしければ、またお越しください。