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Chikirinの日記 RSSフィード

2009-10-16 10年以上のローンはだめです

住宅金融支援機構や銀行が「返済期間が50年」の住宅ローンを提供し始めたというニュース。あきれてぶっとびます。


50年も終わらないローンを組んで、

何かを買うのは、

明らかに「分不相応」ってもんですよ。


25歳で家を買ってローンを組んでも50年ローンだと完済は75歳。男性なら平均寿命ぎりぎり。てか、死ぬ直前まで稼ぐのは無理でしょ。

一度もリストラされないまま年収が上がっていき、退職金も満足の額が出て、子供も無事に独立し、家族の誰も大きな病気にもならず、かつ、親が(自分が60歳くらいの時に介護費用も使わずに)すんなり亡くなり、ある程度の貯金やら不動産を残してくれて、ようやくぎりぎり払えるかも、みたいな「捕らぬ狸を5匹くらい当てにした」計画は無謀すぎます。

しかも地震や火災、地域の治安の変化などで、不動産の方が50年たつ前にダメになる可能性もあるし、自分が引っ越さないといけなくなるかも。先日、そのうち仕事はインドか中国にしかなくなりますよと書きました。いつまでも日本で仕事があると思わないほうがいいっす。


ちきりんはいつ首になるかわからない身なので、マンションを買った時はごく短期間のローンを組みました。でも、たとえ安定した大企業に勤めていたとしても、今の主流である30〜35年ローンでさえ長すぎて怖いと感じます。

ああいう長期のローンは経済の成長期、すなわち「適度なインフレ率と適度な成長率が長期にわたって続く時代」=当然に「給与も、買った不動産自体もどんどん値上がりする時代」を前提に設定された仕組みです。デフレ、低成長時代に成り立つ仕組みとは思えません。

今や、相当の一流企業に勤めていても35年先なんてわかんないし、公務員だってこんな財政赤字の国で、かつ政権さえ変わる世の中では安泰ではないはず。


みんな、最長でも10年のローンで払える範囲のものしか買わない、というまっとうな判断に戻るべき時なんじゃないかと思います。

10年なんて短すぎるって?

よく考えてください。家以外ならそんな長い期間返せない大借金はしないでしょ。なんで家だとそんなにリスク不感症になるんでしょう。リボ払いとかよりよっぽど“無茶な借金”だという気がしますけど。


誤解のないように。私は家を買うなと言っているわけではありません。その時の自分の姿が想像できないほど先まで続く、超長期のローンを組むなと言ってるだけです。

ちゃんと十分な頭金を貯めて、借金の期間は10年で済むくらいになってから“それで買える範囲の”物件を買えばいいんです。

新築にこだわるから高くなるんです。「子供ひとりひとりに個室」とかいうから高くなるんです。分不相応な物件に手を出すのはやめましょう。


そもそも35年ローンは、“銀行と住宅会社と不動産会社の陰謀”です。彼らは贅沢なモデルルームを作って見せびらかし、実態以上に高い値段で買わせ、物件価格では補えないような借金を負わせて金利を取り立ててるんです。

たとえば3000万円で売られている物件があるとしましょう。銀行は実質的には“その物件には3000万円の価値はない”と知りつつお金を貸してくれます。

物件価値が3000万円あると彼らが思っていれば、「お金が返せない場合は担保として不動産を明け渡す」という契約にできるはず。でも実際にはそんな契約はしてくれません。「ローンを返せない場合は、物件を売って弁済し、かつ、足りない分はその後も返し続ける」という契約しかしてくれないんです。


なんでかって?

だって銀行はわかってるんです。その不動産に3000万円の価値があるのは、買った瞬間だけだから、不動産を処分しても、借金が残ると。

不動産の値段は住み始めたとたん=新築でなくなった時点で2割さがり、老朽化する不動産は10年で半額になっていても不思議ではありません。

これは中古住宅でも同じです。新築は割高ですが20年後も「売ることは可能」です。築15年の中古マンションは最初は割安ですが、そのまた20年後ではもう値段が付きません。一戸建てでさえ、都会の猫の額のような土地なんて、建築基準法の改正や条例ひとつで“売れない土地”になってしまう可能性があるんです。


こうして、消費者は10年後には1500万円の価値しかないとわかっている不動産を3000万円で買い、2800万円くらいの借金を背負い、延々と銀行に利子を払い続けるのです。ローンを長期にすればするほど利子は多額に上り、銀行の収益はあがります。だから彼らは長いローンを勧めます。

そして万が一にもローンが返せなくなると、購入者は泣く泣く不動産を売り払う。でも家を手放しても1500万円弱にしかならず、一方で借金の2800万円はほとんど減ってない。結局、不動産を手放しても更に1000万円以上の借金が残る、という悲惨な事態に追い込まれます。

誰が得してます?


想像してみてください。35年ローンとは、子供が5才の時にした大借金を、その子が40才になる年に完済するという計画です。どんだけ先の話かわかるでしょ。

その間には、あなたには海外で働いてみるという選択肢ができるかもしれない。夫婦で別の都市に引っ越して住みたいと思う理由ができるかもしれない。子供の事情で引っ越した方がいいという結論になるかもしれないんです。


しかも既にローンを借りているのに、自分のローンの「利子の総額」を知っている人が少なくて驚きます。

「僕は住宅ローンが3000万円あって・・」という人がいますが、それは元本額です。

今度、周りの人に聞いてみて下さい。「あなたの住宅ローンの利子総額ってどれくらい?」と。答えられない人が半分以上でしょう。


ご参考までに3000万円を 2%の利率、35年返済で借りると、利子総額は1200万円弱です。ボーナス払いにするともっと多いです。変動ローンで途中で利率がアップすると、さらに増えます。

この1200万円は、不動産の対価として払う額ではありません。不動産の値段は“元本合計+頭金”です。不動産とは別に「お金を貸して貰うことの対価として、銀行に払う額」が利子総額です。つまりこの1200万円は“銀行の収入”です。

あなたには1200万円もの大金を、不動産(家)にたいしてではなく、“お金を借りるための対価”として銀行に払う経済力がありますか?利子分の1200万円を稼ぐのに、あなたの手取りで何ヶ月(何年)かかりますか?


よく「35年ローンを組んだけど、もっと早く返すつもり」という人がいます。だったら、最初から短い期間でローンを組めばいいんです。「35年ローンを組んで早期返済で20年で返す」のと、最初から20年ローンを組むのと、「利子の総額」がどれくらい違うか知ってますか?知ってて、そう言ってます?


10年以上のローンが必要になる価格のものは、それが家であれ車であれヨットであれ、自分には分不相応なものだと理解しましょう。それが常識的でまっとうな経済感覚というものです。「家だから30年ローンはごく普通」などと思うなら、あなたは銀行と不動産会社と住宅会社にだまされてます。


分相応に暮らしましょう。


そんじゃーね。



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