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Chikirinの日記 RSSフィード

2011-10-30 インプットか、それともアウトプットか

先日ライフネット生命保険の出口社長とお会いした際、「インプット重視か、アウトプット重視か」ということについて議論したので、その件について書いておきます。


以前より出口社長は講演や著作の中で、「とにかくたくさんインプットすべき!」と強調されています。

私が対談させて頂いた講演会のプレゼンでも、「極論すればアウトプットなんてどうでもいい。とにかくインプットをしなさい。」と言われていて、控え室でモニターを見ていたちきりんは「およよ」(←古すぎ・・)と思いました。

というのも、私は圧倒的に「アウトプット重視派」で、

前著『ゆるく考えよう』の中でも「インプットだけでアウトプットのない人なんて、いてもいなくても世界はなにひとつ変わらない。世の中へのインパクトはゼロ!」と言い切っており、

「どんなに稚拙でもいいから、まずアウトプットすべき。アウトプットして初めて、人は何をインプットすべきかがわかるし、インプットの仕方が変わってくるはず。」と思ってます。

この点についての出口社長とちきりんの意見は、180度、異なっているのです。


出口社長はそのご自身のスタイルを、「少しずつ少しずつ薄皮のようにインプットを積み重ねていく。長年にわたる大量のインプットの蓄積から、じわーと洞察(思考の結果)を出していく」と表現されました。

何十年にもわたり複数の新聞を熟読、大量の書籍を読み、たくさんの場所を訪れ、たくさんの人と話し、とにかくインプットを積み重ねる。

それを続けていれば、いつかは「ユニークな思考の結果である洞察」が滲み出てくる。だからアウトプットを焦らず、インプットに励め、ってことだと思います。

一方の私は、新刊『自分のアタマで考えよう』の終章にまとめているように、自分が出したいと考える「価値あるアウトプット」を具体的に想定し、そのアウトプットに必要な情報を能動的に探しに行くのが「あるべきインプット方法」だと考えています。


で、この意見の違いがどこから来ているのかといえば、つまりは次の3つですね、という話になりました。


理由(1) 学んできた時代が違う

理由(2) 学んできた立場が違う

理由(3) 学んできた場所が違う


具体的には、

理由(1) 学んできた時代が違う

出口社長が20、30代の時代、日本はずっと昇り調子でした。国は若く、勢いがあり、伸びしろが大きな時代です。

それは、人にもモノにも技術にも「長期的な視点で投資する」ことが可能な時代でした。だから、「アウトプットを気にせず、まずはインプットに励む」というアプローチが可能だったのでしょう。

一方のちきりんが(社会人として)育った時代は、最初だけバブルの急上昇を体験したものの、その後はずっと下り坂の経済でした。

日本企業がどんどん余裕を失い、いろんなものを切り捨てていった時代です。そこでは、「すぐにアウトプットにつながらなくても、とりあえず勉強(インプット)しておけばいい」という環境はどんどん失われて行きました。

この「時代の余裕の差」が、インプット重視とアウトプット重視の差を生んでいます。


理由(2) 学んできた立場が違う

出口社長は一流大学を卒業し、日本を代表する企業であり、「ザ・セイホ」と呼ばれた業界ダントツトップ企業でキャリアを積まれています。当時の民間企業で働く人としては、まさに“王道”キャリアです。

どの業界もそうですが、2番手以下の会社は「すぐ上の会社」を見て仕事をするので「考えることより、少しでも数字を上げる」ことが優先されます。一方のトップ企業には、「業界の将来」を作っていくための、より長期的な視野での仕事が存在します。

出口社長はおそらく長くそういった仕事をされていて、「目先のアウトプットより、長期目標のためのインプット」という信念や方法論を身につけられたのでしょう。


一方のちきりんは女性ということもあって、一流日本企業における王道キャリアからは最初から排除されていました。

業界トップ企業にも入れていないし、入ったところには途中で見切りを付け、早々に外資系でキャリアを積むことに決めました。

そしてそこは「結果を出してナンボ」の世界であり、個人に厳しく問われるのは常に「成果=アウトプット」でした。

しかも余りにも高い成果が求められるため、「インプットは、成果に必要なものに限定して追い求める」という姿勢を徹底せざるを得ませんでした。

「成果につながるかどうかはわからないけど、とりあえず勉強しておく」という余裕は、(少なくともちきりんの能力レベルでは)持ち得なかったのです。


理由(3) 学んできた場所が違う

最後が、受けた職業訓練の違いです。

出口社長は豊富な海外経験、国際的な視野をお持ちですが、学びの母体は日本の企業社会です。ちきりんの場合、最初に勤めた日本企業でも(市場という)非常に貴重な学びを得ましたが、骨格となる職業訓練は外資系企業で受けています。

日本の企業社会で得られる職業訓練と、米系の企業社会で得られる職業訓練は大きく異なっており、その違いの一つが「アウトプットをどれほど重視するか」ということです。

企業収益をどの単位(期間)で求めるかという問題と同様、後者では圧倒的に短い期間で、イチイチ「成果はでたのか?」と厳しく問われます。

成果を問われた時に「まだインプット中です」とか呑気なことを言ってると、マジでクビが飛びます。

そして、短期間で確実に成果を出すためには、「大量のインプットを続けて、アウトプットが出てくるのを待つ」というやり方ではなく、確実にアウトプットを出していくための「考える方法論」を身につける必要があったのです。

ちきりんは、ビジネススクールと外資系企業でここのところをきっちり教え込まれました。(『自分のアタマで考えよう』は、まさにその方法論をまとめたビジネス書です。)


というわけで、私が何十年か早く、優秀な男性に生まれていれば、出口社長のように圧倒的に余裕のある組織において、(いつか自然にアウトプットが滲み出してくることを信じ、)長期的な視点で大量のインプットを続ける、というスタイルになっていたかもしれません。

しかし、私の時代、条件、環境ではそれは不可能だったのです。


というわけで、この話は以上です。


で?

オレはどうすればいいんだって?

インプットを重視すべきなのか、アウトプットを重視すべきなのか、教えてくれよって?


・・・聡明な皆さんは、既にこのエントリの“オチ”に気がついていらっしゃいますよね?



そうです。


そんなことは・・・


『自分のアタマで考えよう』



そんじゃーねー!



追記)


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