米国映画『her/世界でひとつの彼女』, スパイク・ジョーンズ、2013、米国






her/世界でひとつの彼女』, スパイク・ジョーンズ、2013、米国

 都会の孤独のなかでOSのなかで生まれた女のひと(人工知能ということ)に恋する男の話。生身の女のひととはうまく行かず(離婚調停中でもあり)ヴァーチャルとしてフィクションとしての女のひとに夢中になる。
 つまりわたしたちの感情とか情緒といったものは人工的なものを対象にしてもいい、あるいはそのほうがうまく行くということなのか。
 わたしたちはそれぞれをオリジナルな存在と思い込みたがっていて、たとえば自分の感情とかに絶対的な信頼を置くわけだが、それもじつは危ういもの。
 
 とはいうもののヴァーチャルなロマンスにいったん、階級やら人種、あるいはジェンダーというコンセプトが混じってくると野心的な近未来的ロマンスの理想といったものががらがら崩れてくる。
 この話はいったいユートピアかデトピアか思い悩むが、見方を変えるとその基盤も脆い。


(ところでフェリー二監督の「カサノバ」でも最後は生身の女より自動人形のほうを好むようになってしまったのを思い出す)


"Her", Spike Jonze, 2013, U.S.
With Joaquin Phoenix, a virtual romance with a lady coming into from Operation System. Two keywords would be "virtual" and "fiction". One who wishes for love can find its ideal in the center of the Operation System. So I guess our emotions or sentiments are also virtual in general. Almost I felt deprived of the real meaning of "love". And I also remember the Casanova of Federico Fellini, On that film Casanova preferred the automaton to real women.