挑戦者ストロング このページをアンテナに追加 RSSフィード

2003/10/11/12/
2004/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2005/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2006/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2007/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2008/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2009/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2010/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2011/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2012/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2013/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2014/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2015/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2016/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2017/01/02/03/04/05/06/07/08/09/10/11/12/
2018/01/02/03/04/05/

2018/05/22 火

高畑勲作品を2本、テレビで再見

| 高畑勲作品を2本、テレビで再見を含むブックマーク 高畑勲作品を2本、テレビで再見のブックマークコメント

2018年4月5日に高畑勲が亡くなった。正直言って、超悲しいですぼく泣いちゃいます、とは全然思わなかった。そうか死んだのかあ、と思っただけだ。その死をまっとうに悲しむには、オレにとって高畑勲は怪物すぎた。

東大仏文科卒のスーパーエリート高畑勲は思想の人で、豚であるところの大衆、つまり我々度し難き愚民を水槽に入れて観察し、その研究と描写に生涯を費やした人という印象がある。たぶん高畑勲個人はいい人だと思うのだけど、創作では客観的で突き放した、圧倒的に冷徹な作品を作る。

4月13日、日テレは緊急追悼で「火垂るの墓」を放送した。RECしといて、後日久しぶりに観た。公開時に「となりのトトロ」との二本立てを劇場で観て、VHSのビデオソフトで観て、テレビ放送も1回は観たと思うので、たぶん4回目か5回目の鑑賞だ。

公開当時、野菜泥棒した清太を百姓が殴る場面は未完成で、無着色の線画のままだった。高校1年だったオレは「斬新な演出! さすが高畑!」と感心し、まさに高畑勲に叱られても仕方ない明き盲っぷりを露呈した。それでも反戦映画ではないことは、2回目くらいの鑑賞で判っていたと思う。

今回観てみて驚愕したのが、清太が節子に恋人や母親の役を投影し、近親相姦願望を持っていたことを明確に描いている点だった。節子の死後、清太の幻想として描かれる一連のアイドルビデオみたいな場面が凄い。おヌードは勿論、ふりむいて笑顔とか、針仕事=世話焼き=甘やかしプレイとか、敬礼(ミンメイ!)とかひと通りやってみせる。ゾッとするほかない。

「節子は私の母になってくれたかもしれない女性だ!」 とくれば、これは完全にシャア・アズナブルである。まさか神戸弁の中学生と、宇宙翔ける赤い彗星が重なるとは思わなんだ。

節子は幼女なので、ちゃんと母を求めた。だが母の無惨な姿を目撃DQNしてしまった清太からは母を慕う気持ちが消え失せてしまい、その代償に節子にとことんのめり込んでいく。この感じが本当に危ない。そこに節子の意志はもはや存在せず、清太は恋人や母親の依代、偶像、人形として節子を愛でてしまう。押井守の「イノセンス」より16年早い。

きれいに死んだ節子を、腐敗する前=母のように醜くなる前に速攻で焼く清太が涙ひとつみせないこのブッ壊れた感じ、マジでイカレてる。本当にヤバイ怖い映画がテレビで放送されて日本中みんな感動して泣いてる。なんだこれすげえ。宮崎駿が悪魔と契約した表現者なら、高畑勲は表現の悪魔そのものだ。


5月15日には三鷹のジブリ美術館高畑勲のお別れ会があり、宮崎駿が涙ながらに読んだ弔事ならぬ開会の辞、その内容を報道で知り、動画も見た。オレは冷たい人間なので、フーンなるほど、と思っただけだ。

追悼気分さめやらぬ5月18日、日テレは「かぐや姫の物語」を放送した。これもRECしといて、後日観た。劇場2回とDVD以来、4度めくらいの鑑賞だ。

かぐや姫の物語」公開時、印象深い感想のひとつが雨宮まみさんの記事だった。

『かぐや姫の物語』の、女の物語 戦場のガールズ・ライフ

不思議な縁で一度だけ、生前の雨宮さんと同席する機会があった。きれいな、花のような人だと思った。正直言って雨宮さんや女性の多くがいかに生き辛く、どれほど抑圧されているのか、がさつなおっさんのオレには想像すれども本当のところはよく判らない。それでも、この感想には胸を衝かれた気がしたものだ。まあそれはそれとして、オレはオレの粗雑な感想を書くしかない。

以前書いた感想はこれ。

観たぜ「かぐや姫の物語」 挑戦者ストロング

「かぐや姫の物語」 追記 挑戦者ストロング

今回の放送を観て、発見がひとつあった。映画の後半、かぐや姫が月に帰らねばならぬとなった後、屋敷の中の作業小屋でわらべ唄の続きを唄う場面。ここに妙なインサート映像が3カット入るのだ。まず夕焼けの海と陸、雁の群れ。次は海辺を空撮でトラックバック、駆けてきた男と幼子が波打ち際で立ち止まる。最後は海辺に立つ松の木の下で、月を見つめる男と子供(2カット目より少し大きいようだ)。

f:id:Dersu:20180522030802j:image:medium 

f:id:Dersu:20180522030803j:image:medium 

f:id:Dersu:20180522030804j:image:medium

劇場での初見時にはなーんだ妙なカラオケ映像だな程度の印象で全然気にしてなかったのだけど、今回観てびっくりした。松があるのは松の原、つまり松原、ということはこれって「羽衣伝説」の結末を描いてるんじゃないのか。2カット目は地上を離れ天に去る天女の俯瞰視点で、砂浜を走って見送る夫の漁師と我が子の姿を。3カット目は天女が去った後、かあちゃんを思って月を見つめる父子の姿。ま、羽衣伝説のストーリーは常識だろうからここでは説明しない。

オレは昔、能の「羽衣」を観たことがある。観世流だった。この「羽衣」では天女は漁師からすぐ羽衣を返してもらい、その場で天女の舞を踊る。幽玄なる舞に漁師と我々が陶酔するうちに、天女は天に帰ってしまう。「E.T.」を色っぽくしたようなお話だった。そういえば、手塚治虫の「火の鳥」にも羽衣編というのがあった。舞台劇をそのまま漫画にしたような実験的なやつで、あまり好きじゃなかったが。

さてアニメに戻ると、唄い終えたかぐや姫は嫗にこう言うのだ。

「遠い昔、この地から帰ってきた人がこの唄を口ずさむのを、月の都で聞いたのです」

「月の羽衣をまとうと、この地の記憶は全てなくしてしまいます」

マジか。「羽衣」の天女は、かぐや姫のパイセンだったのだ。「羽衣」はいつの話なんだかよく判らなかったんだけど、さっきネットで調べたら奈良時代に編まれた「風土記(古風土記)」によるものらしい。この映画は劇中設定を平安時代としているから、時系列上も確かにパイセンなのである。

つまり高畑勲のヨタ話はこういうことだ。「羽衣」の天女は月から奈良時代の地上にやってきた。この天女はあろうことか地上で愚民と結ばれ子をなしたので、事態を重く見た月世界当局は天女を本国へ強制送還し、記憶を奪ってしまった。天女が覚えているのは、地上のわらべ唄のみ。その不思議なわらべ唄を聞いてしまった月人の少女は生命の坩堝たる地球に憧れちゃって仕方なく、決死のテロリズム精神で大気圏単独突入。平安時代の竹林に落っこちて、翁に拾われた。羽衣伝説と竹取物語を股にかけた、壮大なクロスオーバー作品。今川泰宏監督の「ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日」かよ。

そうと判れば、月に赤ん坊の姿が重なるラストカットの説明もつく。あれは地上におけるかぐや姫の幼少の姿の回想かと思ってたが、そうであれば月と重なるのは具合が悪くて変なのだ。あれは月で姫がこれから生む赤子の姿なのだ。なにしろ姫は、地上のマイルドヤンキー捨丸兄ちゃんと空中セックスして身ごもっている。生まれてくる赤子は成長し、地上のすべてを忘れた母こと元かぐや姫がブッ壊れたレコードプレイヤーのように唄うわらべ唄に魅了され、いつの日か地上にやってくるのだろう。歴史は繰り返す。赤子の性別は判らないので、今度はどの昔話に登場するキャラクターになるのやら、想像もつかない。海に落ちて竜宮城の乙姫になるか、スケール間違えて一寸法師になるか。これが高畑勲の、まんが日本昔ばなしスーパースター列伝構想なんだよ! な、何だってェー! お後がよろしいようで。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180522

2018/04/22 日

浅いぜ 被写界深度

「リズと青い鳥」 若い若いね 若いねー 

| 「リズと青い鳥」 若い若いね 若いねー を含むブックマーク 「リズと青い鳥」 若い若いね 若いねー のブックマークコメント

吹奏楽地獄道行(すいそうがくじごくのみちゆき) (★3)

続きを読む

krokawakrokawa 2018/05/07 19:32 オーボエがいつ包丁取り出すか、ヘタなホラーより怖かったです

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180422

2018/04/21 土

この映画最高のショット

スピルバーグ翁と遊ぼう 「レディ・プレイヤー1」

| スピルバーグ翁と遊ぼう 「レディ・プレイヤー1」を含むブックマーク スピルバーグ翁と遊ぼう 「レディ・プレイヤー1」のブックマークコメント

公開初日に「レディ・プレイヤー1」を観てきた。前座に「パシフィック・リム:アップライジング」を観たのだけどこれがダラダラ冗長な映画でガッカリしたので、直後に観た「レディ・プレイヤー1」は非常に楽しめたよ。

以下感想ですが、決定的なネタバレを含むので未見の方は絶対に読まないように。予告編にも一切出てない大ネタがあります。

スピルバーグは地球に残る人 (★3)

続きを読む

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180421

2018/03/06 火

Dersu2018-03-06

同情の拍手はいらない 「シェイプ・オブ・ウォーター」

| 同情の拍手はいらない 「シェイプ・オブ・ウォーター」を含むブックマーク 同情の拍手はいらない 「シェイプ・オブ・ウォーター」のブックマークコメント

アカデミー賞が発表されたから、というわけでもないのだけど「シェイプ・オブ・ウォーター」を観てきました。あんまり気に入らないんだろうなという事前の予想が当たってしまった。以下の感想では結構悪口書いてますが、まあアカデミー賞とったんだからいいだろう。ネタバレありますのでご注意を。

よせ、野暮になる。(★2)

続きを読む

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180306

2018/02/25 日

Dersu2018-02-25

「ひるね姫」で出たヘドを

| 「ひるね姫」で出たヘドをを含むブックマーク 「ひるね姫」で出たヘドをのブックマークコメント

ひるね姫 知らないワタシの物語」をブルーレイで観た。ま、評判もあまりよろしくなかったこの映画を観た人も少ないのでしょうが、これが実にひどい作品で、早速怒りの感想を書いたものの、先日からCinemaScapeが落ちており投稿できない。はてなダイアリなんかに酷評を載せると以前の「スカイ・クロラ」の如くプチ炎上してめんどくさいことになるかもしれんのだけど、まあ押井守作品に比べりゃファンも少なかろう、と思ってここに載せる。一応ネタバレありますが、もはやネタバレとかいう問題でもあるまい。

ヘドが出ます! 大っ嫌い!!(★1)

続きを読む

2018/02/04 日

3枚の看板

ネタバレ前に観ましょう 「スリー・ビルボード」

| ネタバレ前に観ましょう 「スリー・ビルボード」を含むブックマーク ネタバレ前に観ましょう 「スリー・ビルボード」のブックマークコメント

マーティン・マクドナーさんは、もともとアイルランドやイギリスの演劇の世界の人だそうだ。わたくし演劇のことはサッパリ判らないのだけど、この人が作った映画はなぜか観てて、「ヒットマンズ・レクイエム」も「セブン・サイコパス」も非常に面白かった。

ヒットマンズ・レクイエム (字幕版)セブン・サイコパス Blu-ray

ということで評判の高い新作「スリー・ビルボード」を観に行ってきましたよ。いやーこれがまた凄い映画で。まだ観てない人は、以下の感想も読まないほうがいいです。すぐ観に行ってください。

リアルは地獄 (★5)

続きを読む

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180204

2018/01/31 水

母と娘の逃走劇

アクラム・ペールワンの国で 「娘よ」

| アクラム・ペールワンの国で 「娘よ」を含むブックマーク アクラム・ペールワンの国で 「娘よ」のブックマークコメント

amazonビデオの有料レンタルで、パキスタン映画「娘よ」。監督・脚本・製作はアフィア・ナサニエルという女性で、初監督作品。内容は公式サイトでも読んでください。

http://musumeyo.com/

マッドマックス 怒りのデス・ロード」と酷似した映画が、その前年にパキスタンで作られていたとは興味深い。僅かな瑕疵はあれど、力ある見事な映画だ。(★4)

続きを読む

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20180131