(現在は使っていません)口腔機能の歯医者-DocTak舘村 卓のささやき

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前口蓋弓の刺激は感覚誘導なのか

DocTak2006-10-24



先週,間隔を詰めて更新すると言っておきながら,結局,先週の木曜日から週末にかけて,吉田春陽先生たちと大事な大事な将来の仕事(いずれ公開します)のことで食事会,翌日は私のブログの読者とのoff会(と言えば聞こえは良いですが,実は多様な友人が読者になってくれていますので,単純に友人に色々教えてもらいたいための食事会),その翌日は吉田春陽先生が大手前高校(実は,私は,吉田春陽先生の高校の後輩でもあったのです)の学年を超えた同窓会会員で作る合唱団のコンサートを大阪大手前のドーンセンターで行なわれたので,家族で出かけていたために更新できないという結果になってしまいました.うそつき大将になってしまいました.
本当に,毎日更新される方々はすごいと感じています.


さて,閑話休題


前回,K君のお母さんにご指導申し上げたことを図解で.
右上の図を御覧ください.ミックジャガーの口みたいですが,ご容赦を.
長期に経口摂取を行なっていない場合に,咽頭感覚閾値が上昇していて(すなわち,鈍くなっている)喉頭侵入する場合があります.そのような場合に,前口蓋弓を刺激すると嚥下を誘発できるとされています.その誘発する点のことをK-pointというのだと紹介されていますが,残念ながら,このK-pointについての生理学的な確認はできていません.私が渉猟する限りでは,国際的な学術雑誌で1980年から現在まで,「K-point」では,たった2本しか発表がありませんでした.1本はmolecular biologyですので無関係,もう一本は昨年publishされたK-pointを主張されている方のものでした.

このK-pointは何処にあるのか,あるとしたらどんな神経が,どのようなループを持って作用し,臨床的は,どれくらいの強さで,どの程度の範囲を,どれほどの時間,刺激すると,どれくらいの潜時をもって嚥下反射が起こるのかについては,まだわかっていません.

でも,臨床の現場では(私も含めて),前口蓋弓の刺激は,反射性に軟口蓋が挙上し,嚥下のためのgateを開くことはよく知られていることです.


私は,もともと,speech person(アメリカのspeech language pathologistたちは自分たちのことをこのように呼び,私もそのようなグルーの一員と見てもらっています)です.とくに発音時に軟口蓋がどのように調節されているかを中心として,鼻咽腔閉鎖機能の調節機構についての研究をしています.最近では,嚥下時の鼻咽腔閉鎖機能の調節に興味を持っています.


そこで,面白いことが解剖学的に明らかになっていることがあります.
すなわち,鼻咽腔閉鎖機能に関わる筋の中で,前口蓋弓に入っている口蓋舌筋には,ほぼ同じ大型の筋紡錘が多数分布していることが判っています.

つまり,前口蓋弓を刺激すると,筋をストレッチしていることになりますので,そのために嚥下が誘発されるのではないかと,私は考えています.

したがって,マッサ-ジには,二つの効果があると言うことです.一つは,マッサージで感覚閾値を下げること,そのためには冷たい刺激を.2つ目は,ストレッチの効果,そのためには撫でるだけではなく「押す」ことが必要であるということです.


以上です.またまとめ書きをしてしまいました.フー.


小生の嚥下機能と鼻咽腔閉鎖機能に関する論文にご興味のおありの方は,
口蓋舌筋,口蓋帆挙筋の活動を指標にした論文がありますので,読んでみてやってください.

Tachimura T, Okuno K, et al.: Change in levator veli palatini muscle activity in relation to swallowing volume during the transition from the oral phase to pharyngeal phase. Dysphagia, 21(1): 7- 13, 2006.

Tachimura T, Ojima M, et al.: Change in palatoglossus muscle activity in relation to swallowing volume during the transition from the oral phase to pharyngeal phase. Dysphagia ,20(1):32−39,2005.


さて次回は,Nurse Sunさんからの,前回の記事(10月18日版)のコメントにある質問にお答えします.

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