縷々のつぶやき

昭和11年創業!岩喜蓄音機店の3代目店主。現在は、LURU MUSICとして、CDショップ、音楽ホール、音楽制作、音楽イベントなどの企画運営を通じて、地域から世界を楽しくすることを日々楽しんでいます。旧:演歌商店のつぶやき。

美しい日本の四季のうたレコーディング・リサイタル

とらふすクラシック・355。

美しい日本の四季のうたレコーディング・リサイタル
              ソプラノ歌手 瑞樹比美香

新緑の青さが増す今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。この度、私がいま伝えたい「祈りの歌」、そしてこれからも歌い継いでいきたい「日本のうた」のライブレコーディング・リサイタルの開催が決まりました。

まず、6月30日(日)の《胎動Ⅰ》では「美しい日本の四季のうた」、春〜夏にかけての日本の歌を中心に演奏いたします。 私の歌に華を添えてくださるのは、御坊市在住のヴァイオリンの古久保有亜さん、ピアノは和歌山市在住の兼子万実子さんです。そして、今秋9月29日(日)には《胎動Ⅱ》を開催。こちらは秋〜冬の日本の歌、そして「祈り」に重きをおいたオペラアリアを含む外国曲のプログラムで、ヴァイオリンは有亜さん、ピアニストは神奈川県在住の香川紀恵さんです。 今年は竹久夢二生誕140年の年でもあり、夢二の詩で書かれた日本の歌も演奏いたします。

アーティストの息づかいや、客席の気配まで、生の耳で聞くような全方向立体的に広がるリアルな演奏空間が楽しめるLURU HALLを存分に活用させていただき、この2つのリサイタルのライブレコーディングをCDで発売いたします。この胎動シリーズは2つで1つ、新たなものが生まれるコンサートでもあり、 兼ねてからの私の願い “自分の音楽を皆さまのお手元に届ける”という夢が叶います。

演奏当日のお席は33席と限られておりますが、より身近で客席の皆さまと共に呼吸できる空間は特別なものです。終演後には、出演者3人と過ごすアフター・ティーパーティーも行います。お近くでお話ししましょう。 また、当日コンサートにお越しが難しい方は、1週間のアーカイブ付きのオンライン配信チケットもございます。

皆さまと共に創る《胎動》シリーズコンサート、ご来場をお待ちしております。 会場5000円(アフターティーパーティー付)33席限定。配信3000円(1週間アーカイブ付)ご予約はLURU HALL(073-457-1022・11時~18時 水木曜定休)

ソプラノ歌手 瑞樹比美香
神奈川県出身、海南市在住。17歳で伊ジョルダーノ歌劇場でオペラデビュー。ウィーン音楽院、ミュンヘン大学を経て大正大学卒業。2023ウィーン・モーツァルト国際コンクールSpecial Mention受賞

無声映画の金字塔『裁かるゝジャンヌ』ピアノ演奏付上映会

とらふすクラシック・354。
無声映画の金字塔『裁かるゝジャンヌ』ピアノ演奏付上映会
        シネマ203主宰 高水美佐

北ぶらくり丁の正面に、和歌山の文化発信基地がやってきました! 本町文化堂。2017年3月から「まちの本屋」として親しまれてきた本屋プラグが、今年3月に「本町=Book Town」にリニューアル移転(和歌山市本町3丁目6)。新刊、古書、雑誌、絵本、雑貨や、ときには和歌山市内で採れた新鮮野菜なども並ぶ、待望の超本格書店です。2020年から続く人気Podcast番組『本町文化堂からこんにちは』では、本にまつわる様々なカルチャーを毎週紹介しながら、和歌山の魅力を全国に発信し、県外の多くのカルチャー・ピープルをこの街へと誘っています。

そんな本町文化堂からまたひとつ、新たな企画が始動します。[音楽と無声映画]。企画はもちろん、和歌山きっての映画通・店主の嶋田さんです。「1920年代後半のトーキー(発声映画)登場まで、映画のフィルムには音がありませんでした。その頃の映画を、現代『サイレント映画無声映画)』と呼びますが、当時の映画館が決してサイレント=静かだったわけではありません。楽士という専門の音楽家が、ピアノを中心とした楽器の生演奏で、スクリーンに映しだされる映像に、音楽の彩をそえていました」

100年前の映画上映を本格体験させてくれるのは、楽士の鳥飼りょうさん(写真)。現在、上映会で最も演奏する楽士の一人として、関西を中心に国内外の映画祭や劇場で活躍中です。大阪や神戸の映画館での伴奏付き定期上映も人気ですから、和歌山の映画ファンはお待ちかねですね。

上映作品は、シネマ203で連続上映中のカール・テオドア・ドライヤー監督特集から、無声映画の金字塔『裁かるゝジャンヌ』(1928)。ジャンヌ・ダルクが異端審問裁判にかけられ、揺れ動く心の機微が、鳥飼さんのピアノ生伴奏でどう迫りくるのか……一生に一度の映画体験を、存分にお楽しみください。5月25日(土)17時半より本町文化堂2階。ご予約は本町文化堂(073-488-4775)またはシネマ203(090-8172-7074)まで。

高水美佐
和歌山市出身。小中高時代を過ごした1970~80年代、ぶらくり丁周辺の映画館通いに明け暮れ世界の広さに大きな憧れを抱く。2023年10月より、北ぶらくり丁で日本一小さな映画館「シネマ203」主宰。

杉谷昭子賞受賞記念リサイタルに寄せて

とらふすクラシック・353。
杉谷昭子賞受賞記念リサイタルに寄せて
            ピアニスト 天羽博和

2024年2月、リサイタルをしたいな、あんな曲、こんな曲を弾きたいな、などと妄想に耽っておりました。そんなある日、若手演奏家支援企画なるものが目に留まります。和歌山市出身で国際的にも活躍された恩師杉谷昭子先生の東京のサロンで、それも先生ご愛用のピアノでオーディション~合格したらリサイタルとあります!!おお、締め切りまであと数日やないですか!!!決して若手ではないけれども、この五十路にして身につけたことがどれくらい認められるものなのか、試してみるか。そんなノリで受けたら思わぬことに杉谷昭子賞を受賞、5月26日(日)午後6時30分から、東京・錦糸町すみだトリフォニーホールでリサイタルが開催出来るとのメール。うそやろ??と本人が一番びっくりしております。青天の霹靂とはまさにこのこと!!

昨年末には実父が87歳で他界し、喪失感に苛まれておりましたが、ここに来てやっと一歩前進できたかのように、また父からも「もっとしっかりせーよ」と叱咤されたかのように感じています。

今回のプログラムは楽聖たちの晩年の作品を集めたもので、「白鳥の歌」、つまり彼らが人生の終焉に向けてどのように生きたかがテーマです。お世話になった杉谷昭子先生への思いを込め、そして実父の遺した日記を読み返しながら、過去の自分を振り返り、人生の折り返しを過ぎた今、この先どのように生きていくべきなのか考えながら演奏できたら、と思っています。 ブラームス「6つのピアノ小品作品118」第6番の左手のアルペジオは、書かれた前年に経験した押し寄せる洪水、そして右手の交錯する旋律は助けを求める人々の声のように聴こえます。初めて演奏したのは阪神淡路大震災直後の神戸で、その衝撃的な光景とこの曲の背景が重なり、恐ろしさのあまり30年近くもの間、ステージでは弾けませんでした。今回の演奏が、戦争で苦しんでいたり、去る能登半島の災害で被害に遭われたりした方々の心に届きますように。

プロフィール
大阪府生まれ。和歌山在住。相愛大学音楽学部卒業。京都フランス音楽アカデミー、フランス・クールシュヴェール等でも研鑽を積む。2018年、日本人7人目となるドビュッシーピアノ独奏作品全曲演奏を完結。20年、第2回日本室内楽ピアノコンクールに入賞。23年、岡原慎也指揮テレマン室内オーケストラとベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を共演

第52回和歌山県新人演奏会~出演者募集はじまる ~

とらふすクラシック・352。
第52回和歌山県新人演奏会~出演者募集はじまる ~

「次はわたしが、和歌山の音楽史に、名を刻む」特別奨励賞10万円・奨励賞5万円という、第52回和歌山県新人演奏会。今年は11月10日(日)午後1時30分より、海南市民交流センターで開催されます。海南市下津町での開催は初めてですが、クラシック音楽を学ぶ優れた若人達を広く県民に紹介し、 和歌山県の音楽文化の振興と向上を図るために毎年行われています。

新人演奏会への出演者選考公開オーディションは、8月11日(日)午後1時より、同じく海南市民交流センターで開催されます。その応募受け付けは、4月から始まっています。演奏部門は、クラシック又は邦楽演奏(生演奏に限る)で、声楽、器楽、作曲、邦楽、アンサンブル(8名編成を上限とする)。演奏曲目は自由ですが、オーディションで合格の場合、新人演奏会で演奏する曲となります。応募資格は、20歳以上35歳以下(2024年4月1日現在)で、本県の出身者・在住者・勤務者・在学生・卒業生。アンサンブル部門は、出演者の半数以上が該当すること。過去に和歌山県新人演奏会に出演された方は応募できません(アンサンブル部門は除く)。作曲・邦楽部門の出演者は、事前に楽譜提出(返却不可)が必要です。結果発表は、オーディション審査後、即日に発表され、結果発表時に、選考委員から各出演者ごとに講評が行われます。応募締切は、6月30日(日)必着。 オーディション合格者は、第52回和歌山県新人演奏会に出演にあたって、演奏会のチケット代金として3万円が必要となります。詳しくは、和歌山県民文化会館新人演奏会係 (073-436-1331)まで。

有名アーティストたちが立ったこの舞台。今までに800名を超える新人演奏家たちが この舞台から羽ばたいていきました。「次はあなた…」です。また、公開オーディションは、どなたでも入場(未就学児不可)でき、観覧は無料です、応援に駆けつけてみてはどうでしょう!

F.リスト:巡礼の年 第1年 「スイス」に寄せて

とらふすクラシック・351
F.リスト:巡礼の年 第1年 「スイス」に寄せて
   ピアニスト 湯川美佳

2006年6月、私は希望を胸に膨らませて留学の地・ハンガリーに向かっていました。そして、いよいよハンガリーに着陸という時に激しい雷雨に見舞われ、何度も上空を旋回し、気が付けば隣国のウィーンの空港に着陸。ハンガリーに着いたのは、日付が変わってからという前途多難なスタートとなりました。その不安を払拭するかのように温かく迎えてくれたのは、リスト音楽院の外壁に置かれているリストの彫像でした。その後、充実した留学生活を過ごし、ハンガリーの作曲家の研究をするまでに至ったのは、常にこのリストに後押ししてもらっていたからと思っています。6月になると留学時代のことをふと思い出し、原点回帰してしまうのです。

今回、LURU HALLで6月にリサイタルを開催させて頂けることになり、私の中ではリストのプログラム以外に選択肢はありませんでした。そして、かねてより全曲を通して演奏したかった《巡礼の年 第1年 スイス》を選びました。《巡礼の年》は、リストが20代から60代にかけて作曲した4集から成る曲集です。このリストが題した巡礼とは、リストが訪れた地の印象や経験そして目にしたものを楽譜に書きとめた形となっています。

今回演奏する《巡礼の年 第1年 スイス》は、リストが24~25歳にかけてダグー伯爵夫人とスイスを旅した後に書かれた作品です。全9曲から成る作品集は、それぞれの作品にタイトルが付けられ、中にはスイス文学をもとに書かれている作品もありますが、大半はスイスで感じた大自然、聞いた民謡からインスピレーションを受けて書かれています。また、リスト自身、「もっとも強い感動、鮮明な印象を音で表現した。」と述べています。それぞれの作品の情景を思い浮かべながら、リストが1音1音に込めた想いに少しでも寄り添い、全曲演奏をしたいと思います。今回、会場は満席となっておりますが、高音質な配信でお聴きいただけます。詳しくは、QRコードからご覧ください。

プロフィール 湯川美佳
京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程修了後、ハンガリー国立リスト音楽院に留学。京都市立芸術大学大学院音楽研究科博士(後期)課程(器楽領域)修了。博士号取得(音楽)。日高川町文化賞受賞。

コーラス・パレット 25周年記念コンサート

わかやま新報 
とらふすクラシック・350
 コーラス・パレット
  25周年記念コンサート

和歌山市を中心に活動を重ねるコーラス・パレットの25周年記念コンサートが、5月19日(日)午後2時から、和歌山城ホール大ホールで開催されます。

コーラス・パレットは1997年に発足、その誕生もユニークでした。当時から、そして今も、指導を続けているのは薗村祐子さん。薗村さんは、小学校、中学校、高校と教壇に立ちながら、合唱の指導を重ね、全国大会やコンクールに生徒たちを何度も送り出していました。楽しく、時には厳しい指導を経て、合唱の魅力を満喫した卒業生たちが、「どうしても、先生と歌いたい!」と集まり始まったのです。

「あなたも一緒に歌いませんか」と呼びかけ、毎週金曜日、午後7時から、2時間の練習が始まりました。もちろん立ちっぱなし、個人の課題はそれぞれクリアして臨む練習。こうして、2年間に20曲をマスター、3年目にコンサートを開くというコーラス・パレットの積み重ねの上に華が咲くような合唱が出来上がったのです。

今回のコンサートは4部構成。1部は、日本の名歌より「あの町この町」、「ゴンドラの唄」など。2部では、あいみょんの「愛の花」、Miyabiの「いのちの歌」など。3部は、賛助出演の皆さんも加わり総勢80名の大合唱で、福島南相馬で生まれた「群青」や「鴎」(作詞:三好達治、作曲:木下牧子)など。そして、4部は、「恋のバカンス」「百万本のバラ」などで、歌に生き恋に生きるフィナーレとなります。

県代表として全日本おかあさんコーラス全国大会に7回出場、ドイツ海外公演の成功など輝かしい歴史をもつコーラス・パレット。司会もコスチュームも創意工夫にあふれ、常に挑戦。コロナ禍のためやむなく延期されていた25周年記念コンサート。素晴らしいステージが期待できそうです。

このコンサートのチケットは、全席自由席1000円。問合せは、玉置さん(090-5167-4267)、有本さん(090-3033-6419)まで

澤 和樹 & 蓼沼恵美子 デュオ ~癒しと愛の二重奏~

とらふすクラシック・349
澤 和樹 & 蓼沼恵美子 デュオ
   ~癒しと愛の二重奏~
           前• 東京藝術大学長 澤 和樹

1976年の8月21日は、私の演奏家としてのプロデビューと言えるものでした。和歌山の県民文化会館でのデビューリサイタル。まだ東京藝大の4年生でしたが、恩師の海野義雄先生の強い勧めによるものでした。その海野先生から、共演者として推薦されたのが、一学年下のピアノの蓼沼恵美子。ソリスト志向の強い、当時の藝大ピアノ科では異色の室内楽や伴奏にも強い情熱をもって臨み、アンサンブルには引っ張りだこだった彼女に、デビューリサイタルの共演を依頼しましたが、その時は、見事に断られました。彼女は、かねてから挑戦したいと思っていたい日本音楽コンクールピアノ部門の準備中で、9月から始まるコンクールの直前でのリサイタル共演はとても無理というのが理由でした。しかし諦めきれない私は、彼女の担任の田村宏先生にもお願いして、ともにロンドンに留学。1983年にはミュンヘン国際コンクールの二重奏部門で第3位となり、ヴァイオリン・ピアノのデュオとしての活動は、間もなく半世紀を迎えます。

モーツァルトをはじめクラシックの名曲には「癒し」の力があると言われます。思えばバッハ、ヘンデルハイドン••• と続くクラシック音楽と呼ばれる名曲は、もともと「クラシック音楽」として作曲されたわけではなく、教会や王侯貴族の求めに応じて、あるいは庶民の楽しみのために作曲されてきた星の数ほどある無数の作品の中から、多くの人々から愛され、200年、300年という時を超えて大切にされて来た極上の価値を持ったものです。それらの名曲によって人々は身も心も癒され、励まされて来たのではないでしょうか。

そして、多くの名曲に共通するテーマは「愛」。何も男女の愛だけでなく、家族愛、さらに大きく人間愛を高らかに歌い、訴えるものです。久々の故郷、和歌山での二重奏による「癒しと愛」の名曲をお楽しみください。

プロフィール 澤 和樹
1955年和歌山市生まれ。東京藝術大学卒業、同大修士課程修了。安宅賞受賞。ロンドン留学を経て帰国、各地で演奏活動を重ね、県文化賞受賞。前•東京藝術大学長。和歌山県立図書館音楽監督