バイオマス利用率の変遷とその要因

 「バイオマス・ニッポン総合戦略」の2007年2月の報告書では、バイオマスの種類を3種類に分けている。今回はそれぞれの利用率の変遷とその要因をまとめてみる。



1.廃棄物系バイオマス


 ・利用率

  「バイオマス・ニッポン総合戦略」策定以後4%の向上。

 ・要 因

  個別リサイクル法の規制

 ・課 題

  家庭系生ごみの有効利用
  家畜排せつ物の需給不均衡



2.未利用バイオマス


 ・利用率

  「バイオマス・ニッポン総合戦略」策定以後1%の向上
   林地残材は利用されず

 ・要 因

  効率的な収集システムの確立(収集できていない)
  林業コスト全般の縮減を図る(高コスト体制)



3.資源作物


 ・利用率

  ほとんど認められない

 ・今 後

  約38.6万ha(2005年農業センサス)存在する耕作放棄地等を活用
  極めて粗放的に低コストで作付けする



■まとめ


 農業として魅力的なのは「資源作物」であろう。耕作放棄地に雑草を生やしておくよりは菜の花などを栽培して油をとったほうがよい。あとはコストの問題である。







出展:バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議



農林水産省国産バイオ燃料の大幅な生産拡大

(2)バイオマス利用率の変遷とその要因

(1) 廃棄物系バイオマス

廃棄物系バイオマスの利用率は、従来利用率の高い製材工場等残材、黒液を除き、全般的に向上しており、廃棄物系バイオマス全体の利用率は、「バイオマス・ニッポン総合戦略」策定以後、4%の向上となっている。

これは、バイオマス利活用に対する支援策のほか、個別リサイクル法の規制ともあいまって利活用が進んだ効果によるものと考えられる。今後の利活用をさらに進めるための課題としては、家庭系生ごみの有効利用が不十分であること、家畜排せつ物については、多くがたい肥として利用されているが、地域によっては需要量を超えて過剰に発生している地域があり、需給の不均衡が生じていること等が挙げられる。


(2) 未利用バイオマス

バイオマス・ニッポン総合戦略」策定後、未利用バイオマスの利用率は1%の向上にすぎず、林地残材はほとんど利用されていない状況である。平成18年の「バイオマス・ニッポン総合戦略」の見直しでは、未利用バイオマスの利活用を推進するための戦略を示したところであり、生産・排出者側の努力も含めた効率的な収集システムの確立、川上から川下までの林業コスト全般の縮減を図るシステムの導入等による生産・流通・加工のコストダウン、新たな技術を活用したビジネスモデルの導入等を推進することが今後の重要な課題である。


(3) 資源作物

資源作物の利活用は現時点ではほとんど認められないが、菜の花を栽培して食用油として利用した後、廃食用油を収集し、バイオディーゼル燃料の原料として利活用する取組を進めている地域があるほか、さとうきび等を原料にバイオエタノールを製造して自動車用の燃料に利活用する実証試験が行われている。


資源作物の生産は、約38.6万ha(2005年農業センサス)存在する耕作放棄地等を活用して、食料生産に悪影響を与えない形で効率的に資源作物を生産することも重要である。その際、極めて粗放的に低コストで作付けできるようにする必要がある。